2011年 09月 10日
Tord Gustavsen Quartet - 9/4 公演 |
Tord Gustavsen Quartet の公演が 9/4 昼、 東京新宿の Pit Inn にて行われた。
久しぶりの来日、それも世界レベルで大きく成長したバンドのカルテット公演(前回はトリオ)とあって期待が高まっていた。開場と同時に会場前に並んでいた熱心なファンの方が次々に席を埋めていく。静かな昂揚感が漂う。
Tord は楽屋にとどまることなく、開演前の会場内を一人でゆっくり歩いていた。プライヴェートの時間でも一人で公演先の街を歩くのが好きな彼だが、内省的で落ち着いた気分で過ごすのが好みのようだ。 照明が落ち、カルテット紹介のアナウンスが終わると拍手とともにメンバーがステージに昇った。左から グランドピアノのTord、サックスの Tore Brunborg 、ドラムの Jarle Vespestad、ダブルベースの Mats Eilertsen という配置だ。 一曲目は Tord の静かなピアノで始まった。まさに糸を紡ぐといった感じの弾き方だ。前回公演にも増して、一音一音の選び方と弾き方にこだわっている。指が鍵盤に落ちる「秒以下」の単位の時間を幾つにも細分化して、その一つ一つのどの時点に「弾く」という行為が実際に起きて音が発せられるかを微細に意識している。そして、それらがワンパターンでなく、メロディーやリズムの個性に合わせて様々に変化していく。
楽器は慣れてくると「癖」で弾いてしまうことがあるが、Tord は極限にまで自分をコントロールすることにより、音が「演奏の流れに任せて出てしまう」という状況を避けているように思える。それだからこそ、一見ベタな甘いメロディーライン風のフレーズを弾いても、決して陳腐にならない。普通のプレイヤーが弾く「ソフィスティケイテッド(洗練された)ジャズ」ではベタなメロディーラインが出ないよう、弾く内容を変えることにより力を注いでいるように見えるが、Tord はそれを徹底した指使いで克服しているように感じた。これは CD(録音)とライヴを比べてみるとよくわかる。
Tord をサポートするメンバーはツワモノ揃いだ。Jarle は Tord とともにノルウエーのシンガー Silje Nergaard のバックバンドのメンバーを長年務め、Tord とは気心がよく知れているが、Farmers Market や Supersilent (近年脱退)といった超絶バンドの重要メンバーとして活躍してきた。Tore はノルウェー・サックスの王者 Jan Garbarek の次代を担うプレイヤーとして各方面にひっぱりだこだ。それは今年初めにマヌ・カチェのバンドメンバーとして来日していることからも知られる。Mats は自身のトリオやカルテットを持ち、その類稀な作曲の才能が高く評価されているプレイヤーだ。日本の音楽雑誌でも彼のアルバムが年間賞を得ている。Mats のバンドには Tore も参加しているので、ここの連携も文句なしだ。 Pit Inn での演奏は、音量を控え、抑制のよく効いたものだった。オーディエンスや会場スタッフも心得たもので、この日ほど Pit Inn が静かな演奏会場になったことはなかったのではないかと思ったほどだ。Tord のピアノには静かな環境が必須だ。耳をそばだてるどころではない。身体全体を傾注して聴いてはじめて彼の音楽の神髄がわかる。Tord が屋外の会場をあまり好まないのは、まさにそこにある。「サイレンスを聴き、音のスペースを感じる」ことによりTord の音楽が理解される。
「間」を大事にし、それを自然に身につけてきた日本文化と日本人に通じるものがある。
アンコールは二回あったが、二回目は何とTord のソロ・ピアノだった。それもララバイだ。静けさの中から音を紡ぐTord らしい終わり方だった。
セットリスト
The Well
Preludium
On Every Corner
Cocoon
Suite
Left Over Lullaby No. 2
Sustinete
The Swirl
Ebb and Flow
Where We Went
Draw Near
Encores:
Intuition
Left Over Lullaby No. 3
久しぶりの来日、それも世界レベルで大きく成長したバンドのカルテット公演(前回はトリオ)とあって期待が高まっていた。開場と同時に会場前に並んでいた熱心なファンの方が次々に席を埋めていく。静かな昂揚感が漂う。
Tord は楽屋にとどまることなく、開演前の会場内を一人でゆっくり歩いていた。プライヴェートの時間でも一人で公演先の街を歩くのが好きな彼だが、内省的で落ち着いた気分で過ごすのが好みのようだ。
楽器は慣れてくると「癖」で弾いてしまうことがあるが、Tord は極限にまで自分をコントロールすることにより、音が「演奏の流れに任せて出てしまう」という状況を避けているように思える。それだからこそ、一見ベタな甘いメロディーライン風のフレーズを弾いても、決して陳腐にならない。普通のプレイヤーが弾く「ソフィスティケイテッド(洗練された)ジャズ」ではベタなメロディーラインが出ないよう、弾く内容を変えることにより力を注いでいるように見えるが、Tord はそれを徹底した指使いで克服しているように感じた。これは CD(録音)とライヴを比べてみるとよくわかる。
「間」を大事にし、それを自然に身につけてきた日本文化と日本人に通じるものがある。
アンコールは二回あったが、二回目は何とTord のソロ・ピアノだった。それもララバイだ。静けさの中から音を紡ぐTord らしい終わり方だった。
セットリスト
The Well
Preludium
On Every Corner
Cocoon
Suite
Left Over Lullaby No. 2
Sustinete
The Swirl
Ebb and Flow
Where We Went
Draw Near
Encores:
Intuition
Left Over Lullaby No. 3
by invs
| 2011-09-10 11:57
| Tord Gustavsen