2013年 10月 23日
Sinikka Langeland Ensemble - 公演感想 |
9/8 にPit Inn で行われたSinikka Langeland Ensemble 公演について書いておく。当日は昼間の公演だった。カンテレ奏者の桑島実穂がオープニングをつとめた。 カンテレはフィンランドの伝統楽器だが、ノルウェー在住の Sinikka はその演奏家としてフィンランドはもとより世界中に知られる。彼女はノルウェーの中でも独自の歴史と文化を持つ Finnskogen (フィンスコーゲン:「フィン族の森」という意味。17世紀にフィン族が移住した地域で現在のスウェ―デンとの国境沿い)という深い森の中に住んでいる。
当日のライヴは二部構成だった。第一部はバンド全員、第二部はメンバーのソロを順に展開しながら最後にSinikka が加わりアンサンブル演奏となった。
冒頭、「アンサンブル」というバンド名称がただ付いているのではないことがすぐにわかる。Sinnika のヴォーカルやカンテレ、他のメンバーの弾く楽器の調和が大変優れている。音量コントロールはもちろんのこと、各楽器の絡み合い具合や歌のバックでのポジションの取り方などが細かくアレンジされている。だからといって調和を求めるあまりそれぞれの楽器の演奏が躊躇されるようなことはない。各メンバーが全身全霊演奏し、かつそれが同時にバンド全体のアンサンブルを完璧なまでに作り上げている。さすがにヴェテラン勢、内容が違う。
初来日になる Trygve Seim が吹くサックスはゆっくりとした深い味わいのソフトな音色だ。グリッサンドに特徴がある。どこか人のヴォイスに近い。アルメニアにドゥドゥックという木管楽器があってやはり人の声を彷彿させ、「泣き」の音色を出すが、それを思い出した。哀愁を感じるサックス・プレイだ。Sinikka は 31弦の大きな「コンサート・カンテレ」を使った。アコースティック楽器だが、躯体が大きいこともありそれなりの音量がある。更には出てくる音のダイナミック・レンジが広い。倍音がそこらじゅうにあり、ちょっと鳴らしただけで天上の響きがこだまする。彼女は小型のカンテレも持ってきていて、一曲だけ爪の代わりに弓を使って弾いていた(弓に鈴が付いていてそれも鳴る)。"Lucky Cat" の曲だそうだが、そのフレーズの裏を Trygve の「カラ吹き」サックスがなぞり、絶妙なアンサンブルを見せた。これこそ本当の「渋い」だろう。ドラムの Markku Ounaskariは繊細な楽器のカンテレが中心にあるバンドだけあって、大変控えめな演奏だが、とてもきれいなシンバル・ワークを見せる。Trygve の渋いアルトサックスがSinikka のヴォーカルのメロディーラインの裏に微妙に張り付いてバックするのに合わせ、そこはかとないリズムを見せる。 Jo Skaansar はダブルベースをていねいにこまやかなタッチで演奏し、低音部をよく締めていた。メンバーの中では最も若く、経歴的には他のメンバーに比べればまだこれからなのだが、アンサンブルとしては申し分ない。本人はSinikka と演奏するとき以外はよりポピュラーな音楽を志向していると言っていた。
Sinikka は時折りカンテレ全体をなでるようにかき回して、ちょうど琴やハープのような効果を上げる。またミュート音を出しておいて細かく刻んだピッチカート風の弾き方もしていた。これにTrygve のア二ミスティックなサックスが音を消して息使いのみでカラ吹きしている中、Markku がごく細い目のシンバル音で、Jo が弓を使ってダブルベースを弾くと、これまた幻想的とも言っていいようなアンサンブル展開となる。奥が深い。
第二部は、サックスとダブルベースで始まった。途中、ダブルベースがソロをとる。続いてドラムが加わるが、ライドシンバルをマレット 4本で叩くという面白いアプローチを見せた。再度、サックスとダブルベースが入って、最後にSinikka が加わってくる。Sinikka は北欧詩人の詩を歌詞として、そこに曲を付けているのだが、詩が本来持つリズムが自然に歌の中に取り込まれている。ここはやはり英語の歌詞ではしっくりこない。北欧の言葉が北欧の音にのる。
これまで数度来日している Sinikka にとって自分のアンサンブルで来日することは大きな希望であった。2年近い準備を経てようやく実現したこの公演、感慨深いものがあったという。これもお客様はもとより、関係者各位のご協力の賜物だ。この場をお借りして御礼申し上げる。
photos: 鈴木寛路
当日のライヴは二部構成だった。第一部はバンド全員、第二部はメンバーのソロを順に展開しながら最後にSinikka が加わりアンサンブル演奏となった。
冒頭、「アンサンブル」というバンド名称がただ付いているのではないことがすぐにわかる。Sinnika のヴォーカルやカンテレ、他のメンバーの弾く楽器の調和が大変優れている。音量コントロールはもちろんのこと、各楽器の絡み合い具合や歌のバックでのポジションの取り方などが細かくアレンジされている。だからといって調和を求めるあまりそれぞれの楽器の演奏が躊躇されるようなことはない。各メンバーが全身全霊演奏し、かつそれが同時にバンド全体のアンサンブルを完璧なまでに作り上げている。さすがにヴェテラン勢、内容が違う。
初来日になる Trygve Seim が吹くサックスはゆっくりとした深い味わいのソフトな音色だ。グリッサンドに特徴がある。どこか人のヴォイスに近い。アルメニアにドゥドゥックという木管楽器があってやはり人の声を彷彿させ、「泣き」の音色を出すが、それを思い出した。哀愁を感じるサックス・プレイだ。Sinikka は 31弦の大きな「コンサート・カンテレ」を使った。アコースティック楽器だが、躯体が大きいこともありそれなりの音量がある。更には出てくる音のダイナミック・レンジが広い。倍音がそこらじゅうにあり、ちょっと鳴らしただけで天上の響きがこだまする。彼女は小型のカンテレも持ってきていて、一曲だけ爪の代わりに弓を使って弾いていた(弓に鈴が付いていてそれも鳴る)。"Lucky Cat" の曲だそうだが、そのフレーズの裏を Trygve の「カラ吹き」サックスがなぞり、絶妙なアンサンブルを見せた。これこそ本当の「渋い」だろう。ドラムの Markku Ounaskariは繊細な楽器のカンテレが中心にあるバンドだけあって、大変控えめな演奏だが、とてもきれいなシンバル・ワークを見せる。Trygve の渋いアルトサックスがSinikka のヴォーカルのメロディーラインの裏に微妙に張り付いてバックするのに合わせ、そこはかとないリズムを見せる。 Jo Skaansar はダブルベースをていねいにこまやかなタッチで演奏し、低音部をよく締めていた。メンバーの中では最も若く、経歴的には他のメンバーに比べればまだこれからなのだが、アンサンブルとしては申し分ない。本人はSinikka と演奏するとき以外はよりポピュラーな音楽を志向していると言っていた。
Sinikka は時折りカンテレ全体をなでるようにかき回して、ちょうど琴やハープのような効果を上げる。またミュート音を出しておいて細かく刻んだピッチカート風の弾き方もしていた。これにTrygve のア二ミスティックなサックスが音を消して息使いのみでカラ吹きしている中、Markku がごく細い目のシンバル音で、Jo が弓を使ってダブルベースを弾くと、これまた幻想的とも言っていいようなアンサンブル展開となる。奥が深い。
第二部は、サックスとダブルベースで始まった。途中、ダブルベースがソロをとる。続いてドラムが加わるが、ライドシンバルをマレット 4本で叩くという面白いアプローチを見せた。再度、サックスとダブルベースが入って、最後にSinikka が加わってくる。Sinikka は北欧詩人の詩を歌詞として、そこに曲を付けているのだが、詩が本来持つリズムが自然に歌の中に取り込まれている。ここはやはり英語の歌詞ではしっくりこない。北欧の言葉が北欧の音にのる。
これまで数度来日している Sinikka にとって自分のアンサンブルで来日することは大きな希望であった。2年近い準備を経てようやく実現したこの公演、感慨深いものがあったという。これもお客様はもとより、関係者各位のご協力の賜物だ。この場をお借りして御礼申し上げる。
by invs
| 2013-10-23 13:14
| Sinikka Langeland