2015年 01月 22日
Jan Garbarek Group - コンサート感想 |
昨日、1/21、ノルウェーのBodø にてBodø Jazz Open がスタートした。オープニングは Jan Garbarek Group だった。以下、コンサートの模様を書いておく。
コンサートは街の中心部に去年の11月に新築なった文化施設で行われた。施設名は Stormen (英訳すれば Tempest - 暴風雨)、その中の"Store" という名前が付けられた一番大きなホールで行われた。満員になった会場で19:30 に開演、冒頭Bodø Jazz Open のディレクターJan Gunnar Hoff から挨拶があり、バンドが紹介されるとJan Garbarek を先頭に四人のメンバーがステージに登場、すぐにコンサートとなった。 中央右に Garbarek、右手にドラムとパーカッションのTrilok Gurtu、中央左にベースの Yuri Daniel、左手にピアノとキーボードの Rainer Brüninghaus というポジションだ。始まってすぐにフュージョン色が強いことがわかる。リズム・セクションのせいだ。ベースのDaniel がサステインを効かせた深めのよく伸びる音と一部スラップ奏法を使い、Gurtu が乾いた音のドラミングをどちらかといえば隙間なく叩きだす。80年代のライヴを思い出す。メロディー系のGarbarek は例の特色ある「ヒューマン・ヴォイス」サックスで応じ、Brüninghaus もクラシカルなキーボード演奏をするが、全体としてはヨーロピアンというよりもインターナショナル、敢えて言うならばジャズというよりフュージョンという印象だ。 楽曲はよくアレンジされ、ソロ・パートもふんだんにある。曲の中に組み込まれているので一曲が結構の長さになる。数曲にわたる全体の流れの中で、Daniel、Gurtu、Brüninghaus、Garbarek の順で長めのソロ演奏が披露されたが、Gurtu のみ二回目の長いソロがあり、それがソロとしては最も面白かった。プログラムには「パーカッション」と書かれていたが、彼の周りにはドラムセットもある。パーカッションはタブラ、ラテン系とおぼしき床置き型ハンド・ドラム、ほどけた蚊取り線香を上から渦巻状に吊るしたようなメタル製のパーカッション(シャーという音がする)、小さな手持ちの両面ハンド・ドラムの片側にメタルのコイルが付いていてエコー系の音が長く響くパーカッション二種、水の入ったバケツ、韓国などで使う金属製のクェンガリ、その他各種ガジェットなどを使っていた。特に印象に残ったのは、バケツに入れた水にパーカッションを一部漬けて滴り落ちる水音を深いディレイをかけたマイクで拾ったり、メタル・コイル付ドラムやクェンガリをやはり水に漬けながら上下させて音の変化を出したところだった。思いもかけない音が出る。デジタル万能時代に極めてアナログなアプローチでデジタルでは出ない音を出す。さすがにインド出身だと思った。ラジオ放送での擬音演出技師のように、いろいろな素材を工夫して使えばまだまだ知らない音が創造できる。Gurtu はインド特有の口太鼓でも演奏し、大いにオーディエンスを沸かせていた。
Daniel のソロはまさにスラップ(チョッパー)奏法の見せ場で80年代そのままのようだ。Brüninghaus は大部分がクラシック的ピアノに少しだけジャズ的フレーズを交えた、ちょっと微笑ましいソロ(掌でバシャバシャ、滅茶苦茶に鍵盤を叩いたその後すぐに典型ジャズフレーズに戻すことを多用し、オーディエンスには大受け)だった。Garbarek はすべての曲のメイン・チューンを演奏しているせいか、単独の無伴奏ソロというのは限られていた。唯一、目新しいかと思ったのはオーバートーン・フルート(ノルウェーの伝統楽器 Seljefløyte か)のソロがあった時だ。Gurtu のドラムをバックに穴なしフルートを吹いていた。この時はステージ後方に置いてあったPC に寄ってから演奏していた。多分、ディレー効果の深さをサックスの時と変えたのだと思う。Garbarekは常時、足元にディレー・コントロール用にペダルを置いていて、サックスのソロなど肝心のところで使用していた。
コンサートは約 2 時間、途切れなく行われた。その間、Hello もThank You も曲紹介もメンバー紹介もまったくない。アンコールは一曲、曲終了ごとのお辞儀とメンバーを称えるジェスチャーのみを残して公演が終わった。約 800 人の来場者の内95%以上は地元や近くのノルウェーの方々だろう。中近東、アジア、アフリカ、南米の方はいなかったと思う。周りはすべてノルウェー語だった。
Jan Garbarek Group のライヴはこれまで三回ほど見ているが、今回はまた新たな気づきがあった。改めて、ノルウェーの30-40 才代のバンドとの違いを痛感した。広い幅のオーディエンスに向けエンタテインメント性を備えた Jan Garbarek Group に対し、芸術的独創性をとことん追求し、オーディエンスにもそれなりのコミットメントを要求する現在進行形のノルウェーのジャズ・バンドは一般大衆へのアクセスに大きなハンディを負っている。しかしながら、60-70年代に「時代を切り開いてきた」Jan Garbarek、ドラムのJon Christensen 、ギターの Terje Rypdal、ベースの Arild Andersen などのノルウェー出身のECM 系アーティストはかつて同じように芸術的独創性をとことん追求した上で現在に至っているのだ。
Jan Garbarek の成功は同じノルウェーの30-40 才代ミュージシャンに大きな希望を与えている。
photos: Henrik Dvergsdal
Bodø Jazz Open オープニング・コンサートの大成功を報じる現地の新聞(ステージ写真入り)
コンサートは街の中心部に去年の11月に新築なった文化施設で行われた。施設名は Stormen (英訳すれば Tempest - 暴風雨)、その中の"Store" という名前が付けられた一番大きなホールで行われた。満員になった会場で19:30 に開演、冒頭Bodø Jazz Open のディレクターJan Gunnar Hoff から挨拶があり、バンドが紹介されるとJan Garbarek を先頭に四人のメンバーがステージに登場、すぐにコンサートとなった。
コンサートは約 2 時間、途切れなく行われた。その間、Hello もThank You も曲紹介もメンバー紹介もまったくない。アンコールは一曲、曲終了ごとのお辞儀とメンバーを称えるジェスチャーのみを残して公演が終わった。約 800 人の来場者の内95%以上は地元や近くのノルウェーの方々だろう。中近東、アジア、アフリカ、南米の方はいなかったと思う。周りはすべてノルウェー語だった。
Jan Garbarek の成功は同じノルウェーの30-40 才代ミュージシャンに大きな希望を与えている。
photos: Henrik Dvergsdal
Bodø Jazz Open オープニング・コンサートの大成功を報じる現地の新聞(ステージ写真入り)
by invs
| 2015-01-22 18:18