2010年 07月 01日
Skaidi (スカイディ) - 三軒茶屋公演 |
昨夜、三軒茶屋のサロン・テッセラで Skaidi (スカイディ)の公演が行われた。
photo:前沢春美
最初から最後まで目が離せないすばらしい演奏だった。完全アコースティックというのはミュージシャンにとって誤魔化しが一切きかない緊張する公演だが、ものの見事に成し遂げた。サーメ人のInga Juuso (インガ・ユーソ)が「ヨイクする」背後にダブルベースがジャズ的フレーズを流し込む。ヨイクは西洋流の「歌」の概念とは違い、むしろ東洋の原初的民族音楽に近い。反復する変拍子を中心としたつぶやきのような、ハミング風ヴォイス、或いはホーメイ的喉歌と若干の歌詞を伴う「歌」で綴っていく。伝統的にはサーメのシャーマンがドラム(タンバリンの大きなような形のもを棒で叩く)を叩きながら独唱していたものだが、Inga の場合は、デュオを組む Steinar Raknes (スタイナー・ラクネス)のベース音が伴奏となる。ただ、ベース音といっても、それは楽器がダブルベースだということだけで、低音部はもちろんのこと、高音やコード音、ひっかき、叩き、スライド、はたまたベース本体をパーカッションとして利用するなど、出てくる音は変幻自在だ。
こういう組み合わせのデュオは世界的にも珍しい。ヴォイスのバックにピアノやギターの類を入れるのはあまりにも「あたりまえ」故、新たなチャレンジをしたということだろう。これが成功している。常識的には、ダブルベースでは伴奏に不足感が出てしまうと考えてしまうが、Skaidi ではそれを逆手にとっている。不足してしまうと思われるその間隙にダブルベースを縦横に駆使して充足させてしまうのだ。Inga の歌うヨイクは一部の曲を除いて基本的にはペンタトニックと呼ばれる五音音階で構成されている(但し、西洋音階のようにピッチが一定ではなく、微妙に各音がずれたり、震えたり、変化している)が、ウッドベースでその旋律と特徴ある歌いまわしを損なうことなく、かつ一方では伴奏としての役割を果たすという技が素晴らしい。Inga も実に自由に歌っている。多分、ピアノやギターなどのコード音を「作れてしまう」楽器との組み合わせでは、そうならないだろう。シャーマニスティックな雰囲気を多分に残すヨイクの真価を発揮させるには、ダブルベースのみとの組み合わせがベストなのだ。
*サーメについて
サーメの人たちは、今や北欧及びロシア各国の文化に同化し、モダン・ライフを過ごしている。若い世代にはアイデンティティーの強化、つまり一部伝統への回帰が見られるが、総体としてのサーメ文化はキリスト教に代表されるヨーロッパの中に取り込まれているのだ。北極圏で長いこと自然とともに生きてきた人たちだったが、アニミズム崇拝はなくなった。トナカイの放牧をして暮らす人々も限られたものになっている。ただ、そういう環境であっても、変わらないものもある。サーメでは人や動物などを「ヨイクする」というが、その場合、ごく短い歌詞の一部に特徴ある言葉を入れる。そうするとそれを聴いた人は即座にある特定の人や動物を思い出すことができる。それがトナカイだとすると、どの一頭のトナカイか一発でわかるらしい。
サーメはヨーロッパにおいて少数民族としては最大の人口を持っているという。これは逆に言えば、ヨーロッパ内の他の少数民族は消えた(同化もある)か、衰退してかなり少数になっているということだ。サーメはたまたま北極圏という人が住みにくい土地に住んでいたため、他の少数民族より「少数化」のスピードが遅かったわけだ。

最初から最後まで目が離せないすばらしい演奏だった。完全アコースティックというのはミュージシャンにとって誤魔化しが一切きかない緊張する公演だが、ものの見事に成し遂げた。サーメ人のInga Juuso (インガ・ユーソ)が「ヨイクする」背後にダブルベースがジャズ的フレーズを流し込む。ヨイクは西洋流の「歌」の概念とは違い、むしろ東洋の原初的民族音楽に近い。反復する変拍子を中心としたつぶやきのような、ハミング風ヴォイス、或いはホーメイ的喉歌と若干の歌詞を伴う「歌」で綴っていく。伝統的にはサーメのシャーマンがドラム(タンバリンの大きなような形のもを棒で叩く)を叩きながら独唱していたものだが、Inga の場合は、デュオを組む Steinar Raknes (スタイナー・ラクネス)のベース音が伴奏となる。ただ、ベース音といっても、それは楽器がダブルベースだということだけで、低音部はもちろんのこと、高音やコード音、ひっかき、叩き、スライド、はたまたベース本体をパーカッションとして利用するなど、出てくる音は変幻自在だ。
こういう組み合わせのデュオは世界的にも珍しい。ヴォイスのバックにピアノやギターの類を入れるのはあまりにも「あたりまえ」故、新たなチャレンジをしたということだろう。これが成功している。常識的には、ダブルベースでは伴奏に不足感が出てしまうと考えてしまうが、Skaidi ではそれを逆手にとっている。不足してしまうと思われるその間隙にダブルベースを縦横に駆使して充足させてしまうのだ。Inga の歌うヨイクは一部の曲を除いて基本的にはペンタトニックと呼ばれる五音音階で構成されている(但し、西洋音階のようにピッチが一定ではなく、微妙に各音がずれたり、震えたり、変化している)が、ウッドベースでその旋律と特徴ある歌いまわしを損なうことなく、かつ一方では伴奏としての役割を果たすという技が素晴らしい。Inga も実に自由に歌っている。多分、ピアノやギターなどのコード音を「作れてしまう」楽器との組み合わせでは、そうならないだろう。シャーマニスティックな雰囲気を多分に残すヨイクの真価を発揮させるには、ダブルベースのみとの組み合わせがベストなのだ。
*サーメについて
サーメの人たちは、今や北欧及びロシア各国の文化に同化し、モダン・ライフを過ごしている。若い世代にはアイデンティティーの強化、つまり一部伝統への回帰が見られるが、総体としてのサーメ文化はキリスト教に代表されるヨーロッパの中に取り込まれているのだ。北極圏で長いこと自然とともに生きてきた人たちだったが、アニミズム崇拝はなくなった。トナカイの放牧をして暮らす人々も限られたものになっている。ただ、そういう環境であっても、変わらないものもある。サーメでは人や動物などを「ヨイクする」というが、その場合、ごく短い歌詞の一部に特徴ある言葉を入れる。そうするとそれを聴いた人は即座にある特定の人や動物を思い出すことができる。それがトナカイだとすると、どの一頭のトナカイか一発でわかるらしい。
サーメはヨーロッパにおいて少数民族としては最大の人口を持っているという。これは逆に言えば、ヨーロッパ内の他の少数民族は消えた(同化もある)か、衰退してかなり少数になっているということだ。サーメはたまたま北極圏という人が住みにくい土地に住んでいたため、他の少数民族より「少数化」のスピードが遅かったわけだ。
by invs
| 2010-07-01 11:40
| Skaidi

