2011年 12月 21日
「北欧ジャズ現在進行形」公演 - 感想 |
12/18、「北欧ジャズ現在進行形」公演は 新宿Pit Inn での三日間及び代官山「晴れたら空に豆まいて」での二日間の公演をもって終了した。
ノルウエーの Steinar Raknes Quartet と フィンランドの Oddarrang を中心に紹介するというこの企画では、Pit Innで太田惠資、坂本弘道、一樂誉志幸、林正樹、岩瀬立飛が、また「晴れたら空に豆まいて」では Schroeder-Headz 、東京ザヴィヌルバッハ、chio allin がオープニングアクトをつとめた。
Oddarrang は二回目の来日だったが、11月に新譜がリリースされたばかりということで、四公演のうち三公演はニューアルバムを中心にした演奏だった。唯一 12/18 公演のみデビュー・アルバムの曲を集中的に演奏した。初来日のSteinar Raknes Quartet は 三公演とも同じセットリストだったが、長いフルセットの中に多彩なソロが散りばめられていた。また12/18公演は Steinar Raknes がアメリカの60-70年代の曲を歌いながらダブルベースを弾くという異色のソロ公演となった。
日本人ミュージシャンとのインプロヴィゼーションのセッションは三日間に三回行われ、Oddarrangの Olavi Louhivuori と Steinar Raknes Quartet の Steinar Raknes が Pit Inn の初日に、また二日目と三日目はそれぞれが太田惠資+坂本弘道デュオ、林正樹+岩瀬立飛デュオと大変面白い「自由演奏」を繰り広げた。
まさに参加した日欧ミュージシャン自身が語っていたように、「充実した」公演だった。今回出演したミュージシャンは、日本では通常同じ公演会場の同じステージで顔を突き合わせることが「できない」ぐらい「ジャンル的に」離れていると「思われている。」Steinar Raknes Quartet は表面的に言えば通常の「ジャズ」に当てはまる(底にはロックのスピリットを感じるのだが)だろうが、 Oddarrang はクラシック的でもあり、映画音楽的要素もある。日本のミュージシャンはフリー・ジャズの分野、或いは一般ジャズその他で幅広く活躍している。こういう企画は一般的には「めちゃくちゃ」と言われるリスクが高い。ところが、一たび同じステージで演奏しているのを聴くと、実はジャンルなどどうでもいいことがすぐにわかる。ミュージシャンが目指す音楽を真摯に演奏しているのは単に見ていて気持ちがいいだけではない。彼らの音楽が確実に聴く者の身体に浸透してくるのだ。激しいフリー・インプロ・セッションの直後にSteinar Raknes がソロでボブ・ディラン、ジョニー・ミッチェル、クロスビー・スティルス&ナッシュの歌を歌っても何の違和感もない。そこには美が音楽に共通する価値として浮彫になる。 Oddarrang 12/18 Pit Inn 公演 photo: Koshiba Takaaki
Steinar Raknes Quartet 12/17 Pit Inn 公演 photo: Koshiba Takaaki
Steinar Raknes 12/18 Pit Inn 公演 photo: Koshiba Takaaki
Oddarrang はフィンランド的だ。長くどんよりとして暗い冬を耐える国の音楽だけあって、メランコリーの雰囲気が濃い。極めて抑制された音量と音数を少しづつ積み上げていくことによって、ドラマチックな盛り上がりが生まれる。曲のエンディングも終わるというより「消える」という感じで、生滅の流れを体現したような曲構成だ。一方の Steinar Raknes Quartet は落ち着いたバラードやブルース・ロック的ジャズ・インストの要所要所に各楽器によるソロが巧みに配され、変貌自在、まったく飽きさせない。三公演同じセットリストを繰り返したにもかかわらず、どの公演も新鮮だった。
これはこの公演に限ったことではないが、ヨーロッパのバンドはアンサンブルが非常に高度だ。基本中の基本の音量コントロール(この中にはアタックの強弱、選び取る音質の要素も入る)から始まって、バンド・メンバーが演奏中、楽曲の展開上のどの位置に今あって、そのどこに自分がかかわっているのかを非常に細かく把握した上で、自分らしさを創っていくことまで、徹底的に訓練が積まれている。Oddarrang もSteinar Raknes Quartet も、これなくしては成立しない。
太田惠資、坂本弘道、一樂誉志幸、林正樹、岩瀬立飛の演奏も秀逸だった。インプロの構成と展開、楽器の扱い方、それぞれ皆個性があると同時に、アンサンブルへの配慮が行き届いている。ステージ上で「音楽が生まれる」その瞬間を何回も見せてもらった。
今回のような企画は毎年のようにはできないが、引き続き日本と世界のミュージシャンが出会える場を提供していきたい。
ノルウエーの Steinar Raknes Quartet と フィンランドの Oddarrang を中心に紹介するというこの企画では、Pit Innで太田惠資、坂本弘道、一樂誉志幸、林正樹、岩瀬立飛が、また「晴れたら空に豆まいて」では Schroeder-Headz 、東京ザヴィヌルバッハ、chio allin がオープニングアクトをつとめた。
Oddarrang は二回目の来日だったが、11月に新譜がリリースされたばかりということで、四公演のうち三公演はニューアルバムを中心にした演奏だった。唯一 12/18 公演のみデビュー・アルバムの曲を集中的に演奏した。初来日のSteinar Raknes Quartet は 三公演とも同じセットリストだったが、長いフルセットの中に多彩なソロが散りばめられていた。また12/18公演は Steinar Raknes がアメリカの60-70年代の曲を歌いながらダブルベースを弾くという異色のソロ公演となった。
日本人ミュージシャンとのインプロヴィゼーションのセッションは三日間に三回行われ、Oddarrangの Olavi Louhivuori と Steinar Raknes Quartet の Steinar Raknes が Pit Inn の初日に、また二日目と三日目はそれぞれが太田惠資+坂本弘道デュオ、林正樹+岩瀬立飛デュオと大変面白い「自由演奏」を繰り広げた。
まさに参加した日欧ミュージシャン自身が語っていたように、「充実した」公演だった。今回出演したミュージシャンは、日本では通常同じ公演会場の同じステージで顔を突き合わせることが「できない」ぐらい「ジャンル的に」離れていると「思われている。」Steinar Raknes Quartet は表面的に言えば通常の「ジャズ」に当てはまる(底にはロックのスピリットを感じるのだが)だろうが、 Oddarrang はクラシック的でもあり、映画音楽的要素もある。日本のミュージシャンはフリー・ジャズの分野、或いは一般ジャズその他で幅広く活躍している。こういう企画は一般的には「めちゃくちゃ」と言われるリスクが高い。ところが、一たび同じステージで演奏しているのを聴くと、実はジャンルなどどうでもいいことがすぐにわかる。ミュージシャンが目指す音楽を真摯に演奏しているのは単に見ていて気持ちがいいだけではない。彼らの音楽が確実に聴く者の身体に浸透してくるのだ。激しいフリー・インプロ・セッションの直後にSteinar Raknes がソロでボブ・ディラン、ジョニー・ミッチェル、クロスビー・スティルス&ナッシュの歌を歌っても何の違和感もない。そこには美が音楽に共通する価値として浮彫になる。
Oddarrang はフィンランド的だ。長くどんよりとして暗い冬を耐える国の音楽だけあって、メランコリーの雰囲気が濃い。極めて抑制された音量と音数を少しづつ積み上げていくことによって、ドラマチックな盛り上がりが生まれる。曲のエンディングも終わるというより「消える」という感じで、生滅の流れを体現したような曲構成だ。一方の Steinar Raknes Quartet は落ち着いたバラードやブルース・ロック的ジャズ・インストの要所要所に各楽器によるソロが巧みに配され、変貌自在、まったく飽きさせない。三公演同じセットリストを繰り返したにもかかわらず、どの公演も新鮮だった。
これはこの公演に限ったことではないが、ヨーロッパのバンドはアンサンブルが非常に高度だ。基本中の基本の音量コントロール(この中にはアタックの強弱、選び取る音質の要素も入る)から始まって、バンド・メンバーが演奏中、楽曲の展開上のどの位置に今あって、そのどこに自分がかかわっているのかを非常に細かく把握した上で、自分らしさを創っていくことまで、徹底的に訓練が積まれている。Oddarrang もSteinar Raknes Quartet も、これなくしては成立しない。
太田惠資、坂本弘道、一樂誉志幸、林正樹、岩瀬立飛の演奏も秀逸だった。インプロの構成と展開、楽器の扱い方、それぞれ皆個性があると同時に、アンサンブルへの配慮が行き届いている。ステージ上で「音楽が生まれる」その瞬間を何回も見せてもらった。
今回のような企画は毎年のようにはできないが、引き続き日本と世界のミュージシャンが出会える場を提供していきたい。
by invs
| 2011-12-21 14:03