2012年 05月 31日
Petteri Sariola という音楽 |
素晴らしい演奏を記事化する時に困るのは、言葉を尽くしても尽くしきれないということだ。それが真実だ。
それでも、書くことには意義がある。
昨夜、Petteri Sariola の公演が東京代官山のカフェ・ダイニングスペース「山羊に、聞く?」で開催された。
満員の会場はPetteri がステージに登場する前から熱気を帯びていた。オープニング・アクトの音更(おとふけ)の演奏が終了し、ステージのセット替えが行われていたあたりから徐々に「Petteri 遂に登場」の期待が高まっていくのが感じられた。これまでYouTube やネット情報でしか知らなかったアーティストが目の前に現れる。オーディエンスは本当に「待って」いたのだ。あのどうやって弾いているのかわからないギター・ワーク、ヴォーカルとギターが混然一体となったドライヴ感、それらをごく至近距離で目撃できるのだ。アコースティック・ギター・ファンの方々はその思いが特に強かったことと思う。
Petteri がギターを手に現れると、期待感が大きな歓声と拍手で炸裂した。出てきて立っただけなのだが、会場内の視線を一身に集める。演奏する前からの「大歓迎」にPetteri は喜びを隠せない。この日の好演奏はここで決まったと見た。コンサートでオーディエンスがアーティストに与える影響ほど重要なものはない。ステージ上のミュージシャンは敏感だ。会場の雰囲気は手に取るようにわかる。
演奏は「いつも手指のウオームアップにやる」という曲"Stomp"で始まった。確かに手指をこまかく、よく動かさないと弾けない曲だ。もちろん、変則チューニングで、かつ普通の弾き方ではないから、並みのギタリストだったら「ウオームアップ」できないだろう。このあたりの次元からしてPetteri は違う。

だいたい、ほとんどの曲、いや日によっては全曲が変則チューニングだ。それも曲ごとにチューニングを変えていく。こういうアーティストはこれまでお目にかかったことがない。これ自体でも技術的にユニークだが、Petteri の凄さは、その技術を徹底的に自分のモノにしているところだ。変則だろうがなんだろうが、作曲とアレンジの中で完全に消化されている。
選曲は、当日、準備のためのサウンドチェックが終わった頃、だいたい楽屋でセットリストを決めていくというやり方だ。でも、会場からのリクエストや、雰囲気などを考えて、ステージ上で変えていくこともある。昨夜は "Prime"や 「ヒップホップをスローにやった」"Here Comes Fat Bob" といった定番ものに加えて、今回来日では初めて "Army of Clowns"を演奏した。多分、オーディエンスの熱気のなせる業だろう。アンコールも通常より多かった。ヒットナンバーをカヴァーしてメドレーにした曲や、静かな「自分の母親のための歌」だという"Mothersong"が彼のレパートリーの幅広さを示している。

日本が大好きだというPetteriは「3年間ずっと来たいと思っていた」のだが、いろいろな事情で時間が経ってしまったという。お寿司が大好物かと思えば、葛飾北斎の木版画に心酔している。まだ 26 才(!)ということもあって、結構な大食漢でもあり、「いつもお腹がすいている」といってはばからない。そして、何といっても、一切の虚栄と欺瞞から最も遠いところにいる。あの徹底したドライヴ感の向こう側に、清廉な流れが漂うのが見える。
Petteri Sariola という音楽がある。
photos: 岩崎裕和
それでも、書くことには意義がある。
昨夜、Petteri Sariola の公演が東京代官山のカフェ・ダイニングスペース「山羊に、聞く?」で開催された。
満員の会場はPetteri がステージに登場する前から熱気を帯びていた。オープニング・アクトの音更(おとふけ)の演奏が終了し、ステージのセット替えが行われていたあたりから徐々に「Petteri 遂に登場」の期待が高まっていくのが感じられた。これまでYouTube やネット情報でしか知らなかったアーティストが目の前に現れる。オーディエンスは本当に「待って」いたのだ。あのどうやって弾いているのかわからないギター・ワーク、ヴォーカルとギターが混然一体となったドライヴ感、それらをごく至近距離で目撃できるのだ。アコースティック・ギター・ファンの方々はその思いが特に強かったことと思う。
Petteri がギターを手に現れると、期待感が大きな歓声と拍手で炸裂した。出てきて立っただけなのだが、会場内の視線を一身に集める。演奏する前からの「大歓迎」にPetteri は喜びを隠せない。この日の好演奏はここで決まったと見た。コンサートでオーディエンスがアーティストに与える影響ほど重要なものはない。ステージ上のミュージシャンは敏感だ。会場の雰囲気は手に取るようにわかる。
演奏は「いつも手指のウオームアップにやる」という曲"Stomp"で始まった。確かに手指をこまかく、よく動かさないと弾けない曲だ。もちろん、変則チューニングで、かつ普通の弾き方ではないから、並みのギタリストだったら「ウオームアップ」できないだろう。このあたりの次元からしてPetteri は違う。





日本が大好きだというPetteriは「3年間ずっと来たいと思っていた」のだが、いろいろな事情で時間が経ってしまったという。お寿司が大好物かと思えば、葛飾北斎の木版画に心酔している。まだ 26 才(!)ということもあって、結構な大食漢でもあり、「いつもお腹がすいている」といってはばからない。そして、何といっても、一切の虚栄と欺瞞から最も遠いところにいる。あの徹底したドライヴ感の向こう側に、清廉な流れが漂うのが見える。
Petteri Sariola という音楽がある。

photos: 岩崎裕和
by invs
| 2012-05-31 14:10
| Petteri Sariola

