2012年 08月 13日
"Music for a while" 公演 - 感想 |
夏のヨーロッパは各所でいろいろなフェスティヴァルが行われる。音楽フェスも数知れない。
オスロも、8/7-11がロック・ポップ中心のØya Festival(Øyaは「島」の意味)、8/13-18がOslo Jazz Festival、更に 8/10-18がOslo Kammermusikkfestival(室内楽フェスティヴァル)と盛りだくさんだ。
Oslo Kammermusikkfestivalはクラシックもの(ノルウェーのグリーグはじめ、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンなど有名作曲家)がほとんどだが、中にはひねったものも含まれている。その一つが今夜(オスロ時間8/12)開催されるテリエ・リプダルの作品を演奏するコンサートだ。曲は "Fire" op.57 Movement I, II, III, IV となっている。同じ会場でこの曲の前後に演奏される曲は、バッハ、Lene Grenager(1969年生まれのノルウェーの作曲家)、Øyvind Torvund (1976年生まれのノルウェーの作曲家)とショスタコヴィッチのものだ。"Fire" はオーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロで演奏される。
このフェスで、もう一つとてつもなく面白い公演がある。それは昨夜(オスロ時間8/11 21:00)、Kulturkirken Jacob(ヤコブ文化教会)で開催されたアンサンブル"Music for a while" のコンサートだ。行ってきたので、以下、その感想を書いておく。
まずは、メンバーが凄い。
Tora Augestad - vocal
Mathias Eick - trumpet
Pål Hausken - drums, percussion
Martin Taxt - tuba
Stian Carstensen - accordion, slide guitar
アンサンブルは2004年に結成されている。女声ヴォーカルのTora Augestad はクラシックとジャズを学び、ジャズ、ミュージカル、現代音楽、キャバレーを中心に活動している。昨夜はドイツ語・フランス語・英語・ノルウェー語で歌を歌った。Mathias Eick はECMからリーダー・アルバムを2枚リリースしている一方、Jaga Jazzist のメンバーでもあり、多方面で活躍する代表的な若手ミュージシャンだ。Pål HauskenはSusanna Wallumrødのソロ来日公演でバックをつとめていたが、ジャズトリオ In the Country(ピアノはMorten Qvenild – Susanna & the Magical Orchestraでキーボード) のメンバーでもある。1981年生まれでこのアンサンブル最年少でもあるMartin Taxtは既に来日したことがあり、日本のミュージシャンとのインプロ・セッションも多い。Stian Carstensenは泣く子も黙る超絶バンド Farmers Market のリーダーでマルチ・インストラメンタル・プレイヤー、ジャンルレス・縦横無尽に活躍する世界的ミュージシャン(ジャズ界の大御所で他界したマイケル・ブレッカーが舌を巻いた)だ。
そして、この面子でクルト・ヴァイルの音楽を演奏するのだ(ヴァイルはドイツの作曲家だったが、ユダヤ系であったためにナチに干渉され、後にパリ、そしてアメリカへ移住している)。ミュージカルや演劇用の曲が多く、今回の"Music for a while"公演でも聴いたことがある曲が何曲も演奏された。ちなみに、"Music for a while"の “while” と ヴァイルの Weillの発音は掛詞となっているが、"Music for a while"とはイギリスのバロック時代の作曲家Henry Purcell が1692年に作曲した曲の題名(劇「オイディプス」用)でもある。アンサンブル"Music for a while" はヴァイルへの多大なリスペクトに基づき、ヴァイルの曲のみを演奏する。このあたりの言葉遊びは Stian Carstensen が Farmers Market の曲のタイトルで使っている言葉遊びと同様のものを感じる。
実際のライヴはとてつもないものだった。今まで幾多のライヴを見てきたが、"Music for a while" は一歩も二歩も他に抜きんでている。一般によく知られたヴァイルの曲でありながら、それらがあたかもごく最近に出来上がった如くフレッシュな響きを持っていた。それは単に教会が会場になっているという雰囲気や音環境(教会特有のリヴァーブがかかる)のせいではない。丹念なアレンジを凄腕ミュージシャンが完全に消化した上で、それをもう一度楽譜的なスタティックな「譜面読みの合奏」から数段階ほど脱皮させ(これはこのレベルのミュージシャンでは当たり前だが、ヴァイルの曲をここまで脱皮させるのは大変)、グループ全体のアンサンブルの大局を見極めながら実に大胆な解釈のもと、あらゆる音を再吟味してライヴ音として紡ぎだすという、稀に見る「曲芸」であった。教会オルガン調の音をアコーデオンで奏で、クラシックの王道的音のラインが見えたかと思うと、次の一瞬はフリー・ジャズの容貌を呈するという、ノンジャンルの音楽好きであれば愉悦の時空が広がっている。アンコール曲のそれも一番最後の最後のくだりで、Stian 奏でるスライド・ギターが、キメのフレーズを奏でていたが、その時点で彼の両手はスライド・ギターから完全に離れ、弦の上をスライドバーだけが曲に合わせて「正しいスピードで正しい位置まで」自動的にスライドしていった。この奏法はStian の十八番だとはいえ、それをヴァイル・ナンバーのそれも劇音楽ではなく、クラシック調の曲に応用した大胆さには完璧にヤラレた。
公演の音響エンジニアは Susanna ソロ来日公演にも同行したIngar Hunskarだった。この日を皮切りに"Music for a while"のノルウェー・ツアーが始まるが、彼もチームメンバーとして一緒にまわる。ツアー日程は以下のとおり。
8/11 Oslo Kammermusikkfestival, Jakobskirken
8/29 Molde Bjørnsonfestivalen (Ola Kvernberg 特別参加)
8/30 Arendal Jazzklubb
8/31 Risør Jazzklubb
9/1 Flekkefjord Jazzklubb
9/2 Kilden Kristiansand
9/3 Farsund Jazzklubb
9/4 Mandal Jazzklubb
9/5 Jazz Evidence Kongsberg
9/6 Bø Jazzklubb
9/7 Skiens Jazzdraget
9/8 Lyngør Jazzklubb
オスロも、8/7-11がロック・ポップ中心のØya Festival(Øyaは「島」の意味)、8/13-18がOslo Jazz Festival、更に 8/10-18がOslo Kammermusikkfestival(室内楽フェスティヴァル)と盛りだくさんだ。
Oslo Kammermusikkfestivalはクラシックもの(ノルウェーのグリーグはじめ、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンなど有名作曲家)がほとんどだが、中にはひねったものも含まれている。その一つが今夜(オスロ時間8/12)開催されるテリエ・リプダルの作品を演奏するコンサートだ。曲は "Fire" op.57 Movement I, II, III, IV となっている。同じ会場でこの曲の前後に演奏される曲は、バッハ、Lene Grenager(1969年生まれのノルウェーの作曲家)、Øyvind Torvund (1976年生まれのノルウェーの作曲家)とショスタコヴィッチのものだ。"Fire" はオーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロで演奏される。
このフェスで、もう一つとてつもなく面白い公演がある。それは昨夜(オスロ時間8/11 21:00)、Kulturkirken Jacob(ヤコブ文化教会)で開催されたアンサンブル"Music for a while" のコンサートだ。行ってきたので、以下、その感想を書いておく。
まずは、メンバーが凄い。
Tora Augestad - vocal
Mathias Eick - trumpet
Pål Hausken - drums, percussion
Martin Taxt - tuba
Stian Carstensen - accordion, slide guitar
アンサンブルは2004年に結成されている。女声ヴォーカルのTora Augestad はクラシックとジャズを学び、ジャズ、ミュージカル、現代音楽、キャバレーを中心に活動している。昨夜はドイツ語・フランス語・英語・ノルウェー語で歌を歌った。Mathias Eick はECMからリーダー・アルバムを2枚リリースしている一方、Jaga Jazzist のメンバーでもあり、多方面で活躍する代表的な若手ミュージシャンだ。Pål HauskenはSusanna Wallumrødのソロ来日公演でバックをつとめていたが、ジャズトリオ In the Country(ピアノはMorten Qvenild – Susanna & the Magical Orchestraでキーボード) のメンバーでもある。1981年生まれでこのアンサンブル最年少でもあるMartin Taxtは既に来日したことがあり、日本のミュージシャンとのインプロ・セッションも多い。Stian Carstensenは泣く子も黙る超絶バンド Farmers Market のリーダーでマルチ・インストラメンタル・プレイヤー、ジャンルレス・縦横無尽に活躍する世界的ミュージシャン(ジャズ界の大御所で他界したマイケル・ブレッカーが舌を巻いた)だ。
そして、この面子でクルト・ヴァイルの音楽を演奏するのだ(ヴァイルはドイツの作曲家だったが、ユダヤ系であったためにナチに干渉され、後にパリ、そしてアメリカへ移住している)。ミュージカルや演劇用の曲が多く、今回の"Music for a while"公演でも聴いたことがある曲が何曲も演奏された。ちなみに、"Music for a while"の “while” と ヴァイルの Weillの発音は掛詞となっているが、"Music for a while"とはイギリスのバロック時代の作曲家Henry Purcell が1692年に作曲した曲の題名(劇「オイディプス」用)でもある。アンサンブル"Music for a while" はヴァイルへの多大なリスペクトに基づき、ヴァイルの曲のみを演奏する。このあたりの言葉遊びは Stian Carstensen が Farmers Market の曲のタイトルで使っている言葉遊びと同様のものを感じる。
実際のライヴはとてつもないものだった。今まで幾多のライヴを見てきたが、"Music for a while" は一歩も二歩も他に抜きんでている。一般によく知られたヴァイルの曲でありながら、それらがあたかもごく最近に出来上がった如くフレッシュな響きを持っていた。それは単に教会が会場になっているという雰囲気や音環境(教会特有のリヴァーブがかかる)のせいではない。丹念なアレンジを凄腕ミュージシャンが完全に消化した上で、それをもう一度楽譜的なスタティックな「譜面読みの合奏」から数段階ほど脱皮させ(これはこのレベルのミュージシャンでは当たり前だが、ヴァイルの曲をここまで脱皮させるのは大変)、グループ全体のアンサンブルの大局を見極めながら実に大胆な解釈のもと、あらゆる音を再吟味してライヴ音として紡ぎだすという、稀に見る「曲芸」であった。教会オルガン調の音をアコーデオンで奏で、クラシックの王道的音のラインが見えたかと思うと、次の一瞬はフリー・ジャズの容貌を呈するという、ノンジャンルの音楽好きであれば愉悦の時空が広がっている。アンコール曲のそれも一番最後の最後のくだりで、Stian 奏でるスライド・ギターが、キメのフレーズを奏でていたが、その時点で彼の両手はスライド・ギターから完全に離れ、弦の上をスライドバーだけが曲に合わせて「正しいスピードで正しい位置まで」自動的にスライドしていった。この奏法はStian の十八番だとはいえ、それをヴァイル・ナンバーのそれも劇音楽ではなく、クラシック調の曲に応用した大胆さには完璧にヤラレた。

8/11 Oslo Kammermusikkfestival, Jakobskirken
8/29 Molde Bjørnsonfestivalen (Ola Kvernberg 特別参加)
8/30 Arendal Jazzklubb
8/31 Risør Jazzklubb
9/1 Flekkefjord Jazzklubb
9/2 Kilden Kristiansand
9/3 Farsund Jazzklubb
9/4 Mandal Jazzklubb
9/5 Jazz Evidence Kongsberg
9/6 Bø Jazzklubb
9/7 Skiens Jazzdraget
9/8 Lyngør Jazzklubb

by invs
| 2012-08-13 04:18

