2012年 09月 29日
Dag Arnesen Trio - ライヴ感想 |
9/27、Dag Arnesen Trio 公演が東京渋谷の「公園通りクラシックス」で行われた。当日、山手線の事故があり、多くのお客様が遅れ、30分ぐらい開演を延ばし対応した。
演奏はノルウェーを代表する作曲家であるエドヴァール・ グリーグの曲で始まった。ノルウェーの曲だけを演奏するというシリーズを展開しているトリオだから、国の代表選手を最初に取り上げるのは頷ける。クラシックの曲として作曲されているが、これがこのトリオの手にかかると、別の曲に仕上がる。やはりDag Arnesen の編曲の巧みさが際立っている。聴いたことのあるメロディーが入っているから、グリーグ(または「クラシック」)と分かるのだが、これがなければオリジナルとして通ってしまうだろう。 他の曲もとても素晴らしいアレンジだ。ノルウェーのトラッドや子供の歌、ラジオ全盛時代に流行った曲など、どれもいい味付けになっている。普通、「カヴァー曲」は陳腐な演奏になりやすい。オリジナル曲を作曲した人や演奏した人の印象が強く残っているから、後から別のミュージシャンがカヴァーすると、どうしても「比較」される。歌だけ何となく違うとか、途中に違うソロが入っているとか程度では説得力に欠けてしまう。原曲がいい意味でわからないほど、或いは忘れてしまうほどのカヴァーにならないと本当に成功したとはいえない。Dag Arnesen Trio はこの成功レベルの、それも最高段階にある。 当日はDag Arnesen の楽譜が販売されていたが、これも彼のアレンジの凄さが分かれば然りだ。公演会場で自分の楽譜を売るミュージシャンはそうはいない。楽譜はピアノ用はもとより、調音が違うアルト・サックス用とか、他の楽器用の楽譜もあった。Dag の頭の中にはいつもアレンジ用のスコアが描かれているに違いない。 ライヴで聴くこのトリオはCDから受けるおとなしい印象はない。メリハリなどという言葉では表せない、細かく決められたヴォリューム・コントロール、各楽器パートの他の楽器との対位、ドラムやベースそしてピアノのソロのとり方、などあらゆる点で洗練され、かつ迫力がある。子供の頃マーチング・バンドで太鼓を叩いていたドラムのPål Thowsen はそれを彷彿とさせる(でももちろん年季が入って子供の頃とはけた違いにうまくなっているはずの)スネア・ドラミングを聴かせ、25才の女性ダブル・ベース奏者として頭角を現したEllen Andrea Wang (Jazz Japan 誌10月号に記事あり)はよく動く指を使って複雑なベースラインを美しく演奏していた。もちろん、リーダーの Dag が弾くピアノは高音メロディーが流麗だ。一切の過不足がないトリオ、ノーベル平和賞授賞式で演奏できる、王道ジャズ・トリオとはこういうものだ。 当初、今回の公演は、韓国でのツアーの合間を縫って行われる予定だったが、韓国のプロモーターが破産したとかで、急遽、日本のみのライヴとなった。スケジュール調整など、時間的余裕がほとんどない中、企画制作が進行した。その間、終始協力的であったDag Arnesen Trio に「大人の」バンドの姿を見た。 また来年も来たいと言って成田空港を発って行ったが、Dag Arnesen Trio の音楽が彼等自身を日本に呼び戻すことになろう。
photos: 前沢春美
演奏はノルウェーを代表する作曲家であるエドヴァール・ グリーグの曲で始まった。ノルウェーの曲だけを演奏するというシリーズを展開しているトリオだから、国の代表選手を最初に取り上げるのは頷ける。クラシックの曲として作曲されているが、これがこのトリオの手にかかると、別の曲に仕上がる。やはりDag Arnesen の編曲の巧みさが際立っている。聴いたことのあるメロディーが入っているから、グリーグ(または「クラシック」)と分かるのだが、これがなければオリジナルとして通ってしまうだろう。
photos: 前沢春美
by invs
| 2012-09-29 08:56
| Dag Arnesen