2012年 12月 03日
Farmers Market - ライヴを語る (4) |
Farmers Market のバンド・アンサンブルは通常のバンドのアンサンブル・レベルを超えている。
他のバンドの典型的な例では、あるツアーに向けてリハを行い、演奏する曲を決め、その曲順もある程度固めておく。つまりセットリストが予め決まっている。少し柔軟性の高いバンドであれば、セットリストの中で曲順が入れ替わったり、リストにない曲を数曲入れたりする。更に自由度が高いバンドでは、用意したセットリストはなく、幅広いレパートリーの中から当日決めたものを演奏していく。
Farmers Market の場合は、予めある程度の曲リストは仮定としてあったとしても、雰囲気やアドリブの流れ、演奏の展開などを総合的にステージの上で連続的に判断しながら演奏する。場合によっては、曲の途中で突然止めて別の曲に移ったり、決められたフレーズとは別のフレーズを演奏して別のアドリブや曲に持って行ってしまったりする。この中心となっているのは Stian Carstensen だ。彼のちょっとした指示(一定の個所でなく、その場その場で変わる。頭の動きや手の回し方、違うフレーズを弾きだしたり、短い言葉で言ったりする)をきっかけにバンドがあらゆる方向に展開していく。
このあたりのインプロヴィゼーション感覚は、通常の「インプロ」のものとは違う。「ある一定の枠組みの中で自由に演奏」するのと「枠を一部取り払った中で自由に演奏」する違いと言ってもいい。Farmers Market のバンドメンバーは全員それぞれが楽器の達人故、枠を取り払っていても、オーディエンスにはなかなかそう見えない。すべてが決められているかのうように自然に見える。ところが、このバンドのライヴをかなりの数こなしてくると、どこでバンドが「遊んでいる」のか見えてくるのだ。
実に、Farmers Market はステージを楽しんでいる。いつも決められた曲を決められたとおりにやっているのでは面白くない。どんどん変えていく。それも自分たちが驚くように、新鮮な感覚をいつも保てるように演奏する。できるだけ枠を取り払っていこうとするその過程がオーディエンスの前に晒されている。これがわかるようになるとこのバンドのライヴの醍醐味は更に増してくる。
「ライヴで間違ったら、その間違った演奏を繰り返して別の曲にする」というStian の発言も聞いたことがある。Farmers Market のメンバー間のコミュニケーションは神業だ。誰かが一音でもちょっと異なる面白い音を出したら、それに合わせて他のメンバーが曲をいじり出す。そうこうしているうちに、別の展開が出てきて、でもそこを何とか切り抜けて元の枠に戻す。その連続は音楽的には緊張感に満ちているが、「遊んで」いるので、その面白さがオーディエンスにも伝わってくる。
目まぐるしい陶酔感はやがて心地よい笑いと音楽への賛歌にとって代わられる。






photos: 前沢春美 11/15 公演
他のバンドの典型的な例では、あるツアーに向けてリハを行い、演奏する曲を決め、その曲順もある程度固めておく。つまりセットリストが予め決まっている。少し柔軟性の高いバンドであれば、セットリストの中で曲順が入れ替わったり、リストにない曲を数曲入れたりする。更に自由度が高いバンドでは、用意したセットリストはなく、幅広いレパートリーの中から当日決めたものを演奏していく。
Farmers Market の場合は、予めある程度の曲リストは仮定としてあったとしても、雰囲気やアドリブの流れ、演奏の展開などを総合的にステージの上で連続的に判断しながら演奏する。場合によっては、曲の途中で突然止めて別の曲に移ったり、決められたフレーズとは別のフレーズを演奏して別のアドリブや曲に持って行ってしまったりする。この中心となっているのは Stian Carstensen だ。彼のちょっとした指示(一定の個所でなく、その場その場で変わる。頭の動きや手の回し方、違うフレーズを弾きだしたり、短い言葉で言ったりする)をきっかけにバンドがあらゆる方向に展開していく。
このあたりのインプロヴィゼーション感覚は、通常の「インプロ」のものとは違う。「ある一定の枠組みの中で自由に演奏」するのと「枠を一部取り払った中で自由に演奏」する違いと言ってもいい。Farmers Market のバンドメンバーは全員それぞれが楽器の達人故、枠を取り払っていても、オーディエンスにはなかなかそう見えない。すべてが決められているかのうように自然に見える。ところが、このバンドのライヴをかなりの数こなしてくると、どこでバンドが「遊んでいる」のか見えてくるのだ。
実に、Farmers Market はステージを楽しんでいる。いつも決められた曲を決められたとおりにやっているのでは面白くない。どんどん変えていく。それも自分たちが驚くように、新鮮な感覚をいつも保てるように演奏する。できるだけ枠を取り払っていこうとするその過程がオーディエンスの前に晒されている。これがわかるようになるとこのバンドのライヴの醍醐味は更に増してくる。
「ライヴで間違ったら、その間違った演奏を繰り返して別の曲にする」というStian の発言も聞いたことがある。Farmers Market のメンバー間のコミュニケーションは神業だ。誰かが一音でもちょっと異なる面白い音を出したら、それに合わせて他のメンバーが曲をいじり出す。そうこうしているうちに、別の展開が出てきて、でもそこを何とか切り抜けて元の枠に戻す。その連続は音楽的には緊張感に満ちているが、「遊んで」いるので、その面白さがオーディエンスにも伝わってくる。
目まぐるしい陶酔感はやがて心地よい笑いと音楽への賛歌にとって代わられる。







by invs
| 2012-12-03 10:52
| Farmers Market