2013年 01月 03日
Splashgirl 東京公演 - 感想 |
遅くなったが、Splashgirl の東京公演について感想を書いておく。昨年12月7-9日の三日間行われた。
グランドピアノ、ダブルベース、ドラムという典型的なジャズ・ピアノ・トリオの楽器編成を基本としながらも、ステージ上で演奏される音はいわゆるジャズではない。アコースティック楽器の繊細な音を十分に生かしながらも、エレクトロニクス(エフェクトとして)もかなり活用する。例えば、グランドピアノの音は持参したマイクで一度音を拾った上、PC処理して多少ノイズ気味のエフェクトをかける。そしてその音は別のピアノ用マイクで拾われた純粋なピアノ音と同時ミックスされて「ピアノ」として発せられる。或いは、PCに予め用意されたピアノ的サンプル音(メロディーとリズム)を反復再生しているところに、生のピアノを重ねながら実際に弾いていく。ダブルベースも、シンセ音を作り出すエフェクターに一部の音を通して流す一方で生音を別のマイクで拾って同時に出していく。今回の来日ではドラムはあくまで生のみだったが、ノルウエーではドラムにもエフェクトを使う。こうしたエレクトロニクスの使用は、普通のジャズ・トリオよりははるかに多い。ただ、エフェクトを使うといっても、いかにものディストーションをかけたり、どこから出ているのかわからないような、とんでもない音を出すというのではない。そこは極めて慎重にエフェクトを選んでいる。むしろ、エフェクトの音が生音の中に吸収されるよう配慮しているようだ。
このバンドのもう一つの特徴は、これもジャズでは使われるブルース系の音階がほとんどと言っていいほど演奏されないことだ。メロディーや音の変移、構成にはクラシックの影響がある。雰囲気的におとなしい訳ではないが、音量はよくコントロールされ、クレッシェンド的に盛り上がる場所はあるものの、全体としてとても抑制的だ。人によっては「暗い」感じを受けるだろう。これはイギリスなどで、彼らの音楽を称して "Doom Jazz"などと言っていることからもある程度あたっているのだろう。但し、今回のライヴでの演奏を聴く限りは、"doom" (運命・破滅・死)の感覚はなかったように思う。短調系の音群が漂っているからといって、バンド全体の色調が doom というのは短絡的な評ではないか。それよりも、基本フレーズ群とアドリブのまとまりを何組か用意したり、A-B-A-BB-C-A構成のようなユニット構造の曲展開をするといった、これまでやり尽くされた方法に対し、一曲を始まりから終わりまで「同様のリピートするユニット構造を伴わない」一つのストーリー展開として聴かせようという試みが、アナログ演奏によるメロディー/リズムの反復(リピート)を利用しながら行われているような気がする。逆ヒネリ型入れ子のリピート構造こそSplashgirl の特徴ではないか。
いずれにしても、これまで欧米で現れた音楽形態とは一線を画す、新鮮なライヴだった。



photos: 前沢春美 12/7 代官山「晴れたら空に豆まいて」公演

このバンドのもう一つの特徴は、これもジャズでは使われるブルース系の音階がほとんどと言っていいほど演奏されないことだ。メロディーや音の変移、構成にはクラシックの影響がある。雰囲気的におとなしい訳ではないが、音量はよくコントロールされ、クレッシェンド的に盛り上がる場所はあるものの、全体としてとても抑制的だ。人によっては「暗い」感じを受けるだろう。これはイギリスなどで、彼らの音楽を称して "Doom Jazz"などと言っていることからもある程度あたっているのだろう。但し、今回のライヴでの演奏を聴く限りは、"doom" (運命・破滅・死)の感覚はなかったように思う。短調系の音群が漂っているからといって、バンド全体の色調が doom というのは短絡的な評ではないか。それよりも、基本フレーズ群とアドリブのまとまりを何組か用意したり、A-B-A-BB-C-A構成のようなユニット構造の曲展開をするといった、これまでやり尽くされた方法に対し、一曲を始まりから終わりまで「同様のリピートするユニット構造を伴わない」一つのストーリー展開として聴かせようという試みが、アナログ演奏によるメロディー/リズムの反復(リピート)を利用しながら行われているような気がする。逆ヒネリ型入れ子のリピート構造こそSplashgirl の特徴ではないか。
いずれにしても、これまで欧米で現れた音楽形態とは一線を画す、新鮮なライヴだった。




by invs
| 2013-01-03 19:27
| Splashgirl