2014年 08月 14日
平松良太、ピアノ・ソロ・アルバムについて語る |
10月にソロ・ツアーを控える平松良太(ピアノ)は今年に入り、初めてとなるアルバムを制作し、リリースしているが、そのアルバム制作の背景など、彼の考えを寄せてもらった。CDにはライナー・ノーツもなく、制作に関するテキスト表示も少な目なので、以下は大いに参考になる。
大変真摯な、平松良太らしいテキストだ。
「このアルバムは、タイプが全く異なる2つのピアノを使って録音されている。ベーゼンドルファーのインペリアル(通常のピアノより9鍵多い)とスタインウェイのD-274(ニューヨークタイプ)は趣向として対極にあるピアノであり、通常はどちらを弾くか好みがわかれる。1枚のアルバムでこの2つのピアノを使った録音というのは、世界でもほぼ前例がない。
当初、スタインウェイのテストの為、クレッセント・スタジオに足を運んだがベーゼンとスタインウェイ、2台並んだピアノの美しい姿を見て、今回のコンセプトが閃いた。力強く多彩な響きのスタインウェイに対し、ベーゼンのインペリアルには深みがある。ライブでこの2台を同時に使う事はほぼ不可能であり、CD制作でこその可能性というのも感じた。
通常、ピアノのソロ・アルバムというのは最初から最後まで同じ音・環境で録音され、曲の中身と演奏内容そのもので変化をつける。しかし、このアルバムは先に音楽ありきのものではなく、ピアノそのものに向き合うという事からスタートしている。曲であれインプロであれ、音そのものの響きから自分が何を感じるか、つまり、楽曲単位の集合体としてではなく、1枚を1つの作品として表現する事を主眼に置いたアルバムとなっている。その為、CDのジャケットには曲番号や分数がふられていない。曲単位での試聴も可能だが、作品としては切り取りや中断を拒絶した作りとなっている。
このような形でアルバム制作する事は珍しい為、当初は制作スタッフ(エンジニア)にも戸惑いがあった。しかし、最終的には意図を完璧に理解し合い、制作する事ができた。録音そのものは3日間かけて行われ、初日にベーゼン(1.2.5.7.9)残り2日でスタインウェイ(3.4.6.8.10.11)をとった。通常1、2日で終えるミックス作業も1週間以上費やしてやり取りをし、エンジニアと目指す方向に近づいていった。ミックスの中で最も重視されたのは、音そのものの臨場感とダイナミクスをいかに両立させるかという事だった。当初はクラシックレーベルでの録音を考えていたが、充分な理解を得られなかったため、もっとも信用の出来るエンジニアを迎え、自主レーベルという形で目指す音に着地した。
恐らく、殆どの人が気付かないレベルで音が変化していっている。その為、聴き始めと終わりとでアルバムに対して異なる印象を持つ事になるかもしれない。「宵に目覚め、暁に眠る」これが、アルバムそのもののキャッチコピーである。
CDというのは終わりつつあるメディアだという考え方もあるが、規格(分数や情報量)に制限があるという所に、作り手自身の創意趣向が強く表れると感じている。単なる録音としてのCDは価値を持たないと思うが、丹念に練られたものであれば、ピアノ1台で千差万様な表現が可能である。「2」「3」と続けて作る事で、音楽で何が表現出来るのかを問うていきたい。それはこの業界に対しての挑戦であり、批判とも考えている。
「1」はものの順序であり、自分自身の意気込みを端的に表したもの、と捉えていただければ幸いである。」
大変真摯な、平松良太らしいテキストだ。
「このアルバムは、タイプが全く異なる2つのピアノを使って録音されている。ベーゼンドルファーのインペリアル(通常のピアノより9鍵多い)とスタインウェイのD-274(ニューヨークタイプ)は趣向として対極にあるピアノであり、通常はどちらを弾くか好みがわかれる。1枚のアルバムでこの2つのピアノを使った録音というのは、世界でもほぼ前例がない。
当初、スタインウェイのテストの為、クレッセント・スタジオに足を運んだがベーゼンとスタインウェイ、2台並んだピアノの美しい姿を見て、今回のコンセプトが閃いた。力強く多彩な響きのスタインウェイに対し、ベーゼンのインペリアルには深みがある。ライブでこの2台を同時に使う事はほぼ不可能であり、CD制作でこその可能性というのも感じた。
通常、ピアノのソロ・アルバムというのは最初から最後まで同じ音・環境で録音され、曲の中身と演奏内容そのもので変化をつける。しかし、このアルバムは先に音楽ありきのものではなく、ピアノそのものに向き合うという事からスタートしている。曲であれインプロであれ、音そのものの響きから自分が何を感じるか、つまり、楽曲単位の集合体としてではなく、1枚を1つの作品として表現する事を主眼に置いたアルバムとなっている。その為、CDのジャケットには曲番号や分数がふられていない。曲単位での試聴も可能だが、作品としては切り取りや中断を拒絶した作りとなっている。
このような形でアルバム制作する事は珍しい為、当初は制作スタッフ(エンジニア)にも戸惑いがあった。しかし、最終的には意図を完璧に理解し合い、制作する事ができた。録音そのものは3日間かけて行われ、初日にベーゼン(1.2.5.7.9)残り2日でスタインウェイ(3.4.6.8.10.11)をとった。通常1、2日で終えるミックス作業も1週間以上費やしてやり取りをし、エンジニアと目指す方向に近づいていった。ミックスの中で最も重視されたのは、音そのものの臨場感とダイナミクスをいかに両立させるかという事だった。当初はクラシックレーベルでの録音を考えていたが、充分な理解を得られなかったため、もっとも信用の出来るエンジニアを迎え、自主レーベルという形で目指す音に着地した。
恐らく、殆どの人が気付かないレベルで音が変化していっている。その為、聴き始めと終わりとでアルバムに対して異なる印象を持つ事になるかもしれない。「宵に目覚め、暁に眠る」これが、アルバムそのもののキャッチコピーである。
CDというのは終わりつつあるメディアだという考え方もあるが、規格(分数や情報量)に制限があるという所に、作り手自身の創意趣向が強く表れると感じている。単なる録音としてのCDは価値を持たないと思うが、丹念に練られたものであれば、ピアノ1台で千差万様な表現が可能である。「2」「3」と続けて作る事で、音楽で何が表現出来るのかを問うていきたい。それはこの業界に対しての挑戦であり、批判とも考えている。
「1」はものの順序であり、自分自身の意気込みを端的に表したもの、と捉えていただければ幸いである。」
by invs
| 2014-08-14 09:19
| 平松良太