2018年 07月 12日
サーミ、Sara Marielle Gaup、Lavvu |
Riddu Riđđuフェスではサーミについて様々な側面から説明やデモンストレーションが行われている。
その内の一つが会場に設営されているサーミの伝統的な移動式の家/テント Lavvu (ラッヴ)だ。中を覗いたら偶然 Sara Marielle Gaup がいて招き入れられた。Sara(親しい人の間では Marielle と呼ばれている) はノルウェーのデュオ・グループ Arvvas でヨイクを歌っている。Real & True でここ何年か毎年のように日本ツアーを行っているアーティストだ。彼女は伝統的なサーミの生活文化を肌身で知っている数少ないサーミとして、音楽だけでなくいろいろな分野で活躍している。このフェスでは、Lavvu の中で実際のサーミのテント生活を説明する役割を担っている。
Lavvu は外見上はアメリカ・インディアンのテント「ティピ」に似ているが、ティピほど尖がってなく、より強風に耐えられるように建てられている。木を何本か円錐状に立て掛け、その周りに帆に使われるようなキャンヴァス地の布が張られる(以前は綿の布地、その前はトナカイの皮製だった)。中心柱がなくテント内は結構広い。会場に設営されているものは大型で、詰めれば 20-30人は入れそうだった。地面にはじかにトナカイの毛皮が敷かれていた。優に 30枚は重ねられて敷かれていて、テントの中心に設置された石製の囲炉裏の火とあいまって暖がとれるようになっている。実際、靴を履いたまま座ってみたが、結構温かい。
Sara の説明では、テントの入り口と反対側のエリアは台所になっているが、ここは神聖な場所で、いつも清潔に保ち、そこを横切ったり、手を伸ばして反対側に出すようなことは決してやってはいけない。囲炉裏とその先のテントの入り口に向かう部分も神聖で、それぞれ別々の神が宿っているのだという。Sara によると、昔は、入り口と正反対側(台所側)にもう一つ、熊のための特別な入り口が備わっていたらしい。熊は神聖な動物で、よほどの飢饉でない限り、狩猟の対象とはしなかったということだ。熊狩りをする時は特別の儀式を行っていた。アイヌの熊の儀礼に似ている。
囲炉裏の火にくべられていたのは樺の木のようだった。家屋内に煙が漂い、少しばかり灰が飛ぶ様子は江戸時代までの日本の農家を思い出させた。煙はテント中央トップにある小さな穴(ここに円錐上にまとめられた木の先端が集まっている)から抜けていくのだが、抜ける前に結構な量がテント内を回る。それを避けるには、トナカイの毛皮の上にほぼ平らな形で身を低く置くことだと Sara が話していた。彼女は現代では数少ないホンモノのサーミ文化継承者だ。実際の生活で身につけた知識と経験は、サーミ文化の再興を進める人たちにとってかけがえのないものだろう。
日本ツアーで見たヨイクの吟詠者/ヴォイス・パーフォーマーとはまた一段と違った Sara を間近に見て、サーミ文化の更なる深淵を知りたいと思った。
1800年代に撮影された Lavuu(Wikipedia より)
その内の一つが会場に設営されているサーミの伝統的な移動式の家/テント Lavvu (ラッヴ)だ。中を覗いたら偶然 Sara Marielle Gaup がいて招き入れられた。Sara(親しい人の間では Marielle と呼ばれている) はノルウェーのデュオ・グループ Arvvas でヨイクを歌っている。Real & True でここ何年か毎年のように日本ツアーを行っているアーティストだ。彼女は伝統的なサーミの生活文化を肌身で知っている数少ないサーミとして、音楽だけでなくいろいろな分野で活躍している。このフェスでは、Lavvu の中で実際のサーミのテント生活を説明する役割を担っている。
Lavvu は外見上はアメリカ・インディアンのテント「ティピ」に似ているが、ティピほど尖がってなく、より強風に耐えられるように建てられている。木を何本か円錐状に立て掛け、その周りに帆に使われるようなキャンヴァス地の布が張られる(以前は綿の布地、その前はトナカイの皮製だった)。中心柱がなくテント内は結構広い。会場に設営されているものは大型で、詰めれば 20-30人は入れそうだった。地面にはじかにトナカイの毛皮が敷かれていた。優に 30枚は重ねられて敷かれていて、テントの中心に設置された石製の囲炉裏の火とあいまって暖がとれるようになっている。実際、靴を履いたまま座ってみたが、結構温かい。
Sara の説明では、テントの入り口と反対側のエリアは台所になっているが、ここは神聖な場所で、いつも清潔に保ち、そこを横切ったり、手を伸ばして反対側に出すようなことは決してやってはいけない。囲炉裏とその先のテントの入り口に向かう部分も神聖で、それぞれ別々の神が宿っているのだという。Sara によると、昔は、入り口と正反対側(台所側)にもう一つ、熊のための特別な入り口が備わっていたらしい。熊は神聖な動物で、よほどの飢饉でない限り、狩猟の対象とはしなかったということだ。熊狩りをする時は特別の儀式を行っていた。アイヌの熊の儀礼に似ている。
囲炉裏の火にくべられていたのは樺の木のようだった。家屋内に煙が漂い、少しばかり灰が飛ぶ様子は江戸時代までの日本の農家を思い出させた。煙はテント中央トップにある小さな穴(ここに円錐上にまとめられた木の先端が集まっている)から抜けていくのだが、抜ける前に結構な量がテント内を回る。それを避けるには、トナカイの毛皮の上にほぼ平らな形で身を低く置くことだと Sara が話していた。彼女は現代では数少ないホンモノのサーミ文化継承者だ。実際の生活で身につけた知識と経験は、サーミ文化の再興を進める人たちにとってかけがえのないものだろう。
日本ツアーで見たヨイクの吟詠者/ヴォイス・パーフォーマーとはまた一段と違った Sara を間近に見て、サーミ文化の更なる深淵を知りたいと思った。

by invs
| 2018-07-12 23:39
| Sara Marielle Gaup B