ピアニスト Jean-Christophe Cholet、今夜上越公演、インプロヴィゼーションについて

今夜、ピアニスト Jean-Christophe Cholet の上越公演がラ・ソネ菓寮春日山店で開催される。

インプロヴィゼーションとは不思議なものだ。どういう曲を聴くことになるのかオーディエンスにはわからない。何を弾くかは、アーティスト本人にも説明できない。弾いた瞬間には次の「何を弾くかわからない」音に移っている。まさにこの「わからない」ことに面白さがある。

今の世の中、かなりの部分が「わかっている」か、「わかっている」と思っている。人生もどうなるか「わかっている」か「わかろう」とする。わからないと不安で、わかっていると安心だ。大部分の人にとっては、多分に予測可能な思考方法が支配的だ。そうでないと複雑を極める現代社会、秒単位以下での競争社会で後れを取ってしまう。

でも、「わかっている」を一度捨ててみる。先入観をなくし、白紙の状態で音の中に身を投げ出す。そうしてみると、新鮮な驚きがある。ああ、こんな音、こんな展開もあるのだな、と自分の（それでも残っている先入観による）予測が気持ちよく裏切られていく。知っている曲で安心を得るのも、不安の真っただ中にいる人にとっては大切だが、「わからない」という、普段と違う心持で新たなことに接するのも、心の静かな、しかしチャレンジングな鍛錬には必要だと思う。

フランスの Jean-Christophe Cholet (ジャン-クリストフ・ショレー) ピアノ・ソロ日本公演