Jean-Christophe Cholet、今夜日本最終公演、稲毛 - 公演感想 |
今夜、Jean-Christophe Cholet の日本最終公演が稲毛の Candy で行われる。18:30 オープン、19:00 スタートだ。
これまで毎日、インプロヴィゼーションで異なる曲を「生み出して」きた Jean-Christophe だが、そこには幾つか各公演に共通するものがある。一つは、インプロの各曲を見渡すと不協和音系のものと協和音系のものがあり、それらがいいバランスで全体を構成して、一種のストーリーが公演を通して作られているかのように見える点だ。もう一つは、東京公演を除いて、インプロヴィゼーションのためにインスピレーションを得るのを目的として、曲によっては例えば和音構成の基本形を 5 度とか 9 度に設定したらどうなるか(どうインプロヴィゼーションできるか)を自問したり、或いは、単に一つの雰囲気を思い出すよう自ら仕向けている。更に、各曲の最後に「解決」(例えば不協和音系で始まったのを協和音系で終える)を与えて、投げ出しで終わるのを避けているところが多いのも共通している。
東京公演は録音して作品化するという目的があったため、敢えてインスピレーションをも完全に即応体制にして自らに試練を課していた。そして、集中力を増すために一部と二部という通常ジャズのライブでとられる公演形態はとらず、東京公演は通しで一回のみとなった。使用したピアノはスタインウェイのフルコンサート・グランドの D 型 274 Hamburg というモデルで、使用状態もよく、当然ながら当日調律したものだった。会場の Karura ホールも申し分なく、完全防音、録音態勢も万全だ。
Jean-Christophe は打鍵のタッチがことのほか強いが、これは「クラシックをやっていたから」だと言い、「強いと、弱いタッチもできるが、弱いと強いタッチはできない」と説明してくれた。長く連続する不協和音のコード(和音)を両手で弾くと、まさにthundering sound (雷のような音)を聴くことができる。また、彼のペダル・ワークも、ラウドペダルのサステイン効果とソフトペダルの抑制効果が巧みに組み合わされ、微妙な音の表現がなされていた。
特筆すべきは内部奏法がカラフルだったことだ。曲としては全体の中で一回しか使わなかったが、使った時はメロディアスで、その幅もジャズで良く使われる低音部の一発弾き的なものだけではなく、優雅な響きを持っていた。
全体として感じられたのは、やはりクラシックで鍛えたピアノだということだ。10 才で始めたというから、日本の音楽教育より遅いが、「幾つでも始められる」と彼はいい、実際その演奏を目の当たりにすれば納得する。
通常、ジャズ・クラブのピアノは千差万別でその状態は必ずしもいいとは言えないが、それでも「いい演奏」を心がけるのがプロだ。Jean-Christophe Cholet は「弘法筆を選ばず」を地で行く、頼もしいプレイヤーだ。