2008年 05月 28日
Farmers Market - 5/25 Pit Inn 公演 |
Farmers Market 公演が 5/25 Pit Inn で行われた。
満員の会場に登場したFarmers Market は温かい拍手で迎えられた。3年ぶりの来日ということもあり、会場は期待に満ち、バンドの一挙手一動をも見過ごさないぞという気迫で、逆に静かでさえあった。こういう雰囲気のライヴは珍しい。
新曲が数多く披露されたが、かなりのインプロの量だった。Farmers Market は徹底的に練られた曲を演奏すると同時に、ステージ上で勝手にどんどん曲を作っていってしまう特技がある。言ってみればこれもインプロなのだが、普通と違うのはある定型のフレーズやコード進行をフレームにしてソロをとるのとは別に、メンバーの誰かが「勝手に」始めたフレーズやテーマを他のメンバーがたとえ全く知らなくても「それを耳で聴いて曲にしていく」というところだ。だから、この「創作現場」をオーディエンスは目の当たりにすることになる。
これは普通のバンドの場合、かなり危険だ。演奏を間違えたり、他のメンバーから取り残されたりという状況に陥る。ところが、Farmers Market の場合は、間違いも利用してそれを曲の一部に取り込んでしまう。もともと全員高いレベルの技量の持ち主だから、聴いている方にはなかなかわからない。Stian は、「一度間違えても涼しい顔をして、わざと間違えたフレーズを同じように繰り返してパターン化し、それを曲にする」と言っていた。もちろん、だからといって、「ヘタ」なバンドということではない。あれだけの難曲をすべての公演で全メンバーがまったく一度も間違えないということはありえない。間違いを楽曲化するというのは、稀に起きる間違いをむしろ「パターンを破る喜ばしい現象」ととらえて、それをポジティヴに受け止め、利用するという逞しさを表している。
Pit Inn 公演にはFarmers Market の初来日公演以来からずっとライヴをご覧になっている方が多く来られていた。そういうこともあって、バンドは多分自らの創作の喜びを伝えたかったのだと思う。17年も同じメンバーでバンドをやっているので、昔の曲は勝手に体が動いて弾けてしまうというから、それではせっかく来ていただいた長年のファンの方には「努力の跡」が見えないと思われると考えたのかもしれない。自らの身を危険領域に置くインプロこそが彼らにとっては本当のサービスなのだろう。
もちろん、ファンの方には、定番となっている曲を是非聴きたいという心理がある。むしろ、それこそがファン・サービスという意見も当然だ。でも、ミュージシャンズ・ミュージシャンのFarmers Market が長い時間のインプロを晒すという行為は、サーカス業界に名前が轟く綱渡り芸人が、それまで練習したことのないパターンなり技なりを命綱なしで大衆の目前に披露することに近い。
"Dancing Queen"をメドレーの中で聴けなかったファンの方には物足りなさもあったかも知れない。でも、バンドは生き物だ。存在し続けるためには常に変化しなければならない。へヴィー・メタルを茶化したような新曲、カントリー・ウエスタンやハワイアンを本家どりしながら「遊んで」しまう曲、「インド風ヴォーカル」がブルー・グラスと混ぜられているような曲など、言葉で説明しようとすると限界があるが、融通無碍なFarmers Market はジャンル分けの不毛さを身を持って証明している数少ないバンドだ。
写真:前沢春美
満員の会場に登場したFarmers Market は温かい拍手で迎えられた。3年ぶりの来日ということもあり、会場は期待に満ち、バンドの一挙手一動をも見過ごさないぞという気迫で、逆に静かでさえあった。こういう雰囲気のライヴは珍しい。
新曲が数多く披露されたが、かなりのインプロの量だった。Farmers Market は徹底的に練られた曲を演奏すると同時に、ステージ上で勝手にどんどん曲を作っていってしまう特技がある。言ってみればこれもインプロなのだが、普通と違うのはある定型のフレーズやコード進行をフレームにしてソロをとるのとは別に、メンバーの誰かが「勝手に」始めたフレーズやテーマを他のメンバーがたとえ全く知らなくても「それを耳で聴いて曲にしていく」というところだ。だから、この「創作現場」をオーディエンスは目の当たりにすることになる。
これは普通のバンドの場合、かなり危険だ。演奏を間違えたり、他のメンバーから取り残されたりという状況に陥る。ところが、Farmers Market の場合は、間違いも利用してそれを曲の一部に取り込んでしまう。もともと全員高いレベルの技量の持ち主だから、聴いている方にはなかなかわからない。Stian は、「一度間違えても涼しい顔をして、わざと間違えたフレーズを同じように繰り返してパターン化し、それを曲にする」と言っていた。もちろん、だからといって、「ヘタ」なバンドということではない。あれだけの難曲をすべての公演で全メンバーがまったく一度も間違えないということはありえない。間違いを楽曲化するというのは、稀に起きる間違いをむしろ「パターンを破る喜ばしい現象」ととらえて、それをポジティヴに受け止め、利用するという逞しさを表している。
Pit Inn 公演にはFarmers Market の初来日公演以来からずっとライヴをご覧になっている方が多く来られていた。そういうこともあって、バンドは多分自らの創作の喜びを伝えたかったのだと思う。17年も同じメンバーでバンドをやっているので、昔の曲は勝手に体が動いて弾けてしまうというから、それではせっかく来ていただいた長年のファンの方には「努力の跡」が見えないと思われると考えたのかもしれない。自らの身を危険領域に置くインプロこそが彼らにとっては本当のサービスなのだろう。
もちろん、ファンの方には、定番となっている曲を是非聴きたいという心理がある。むしろ、それこそがファン・サービスという意見も当然だ。でも、ミュージシャンズ・ミュージシャンのFarmers Market が長い時間のインプロを晒すという行為は、サーカス業界に名前が轟く綱渡り芸人が、それまで練習したことのないパターンなり技なりを命綱なしで大衆の目前に披露することに近い。
"Dancing Queen"をメドレーの中で聴けなかったファンの方には物足りなさもあったかも知れない。でも、バンドは生き物だ。存在し続けるためには常に変化しなければならない。へヴィー・メタルを茶化したような新曲、カントリー・ウエスタンやハワイアンを本家どりしながら「遊んで」しまう曲、「インド風ヴォーカル」がブルー・グラスと混ぜられているような曲など、言葉で説明しようとすると限界があるが、融通無碍なFarmers Market はジャンル分けの不毛さを身を持って証明している数少ないバンドだ。
写真:前沢春美
by invs
| 2008-05-28 09:24
| Farmers Market