2017年 05月 21日
John Pål Inderberg Trio 来日公演終了、感想 |
John Pål Inderberg Trio の全来日公演が終了した。短い期間だったが充実した内容だった。
John Pål Inderberg Trio 関連 Blog 記事一覧
三公演はどれもレベルが高く、さすがヴェテラン・プレイヤー率いるノルウェーのトリオと思わせるものだった。ピアノ・トリオと比べてサックスが主体のトリオは更にシンプルさが増す。それだけにメンバー各自の演奏内容とバンド全体としてのバランスには細心の注意が要求される。ヘタなトリオでは音がスカスカになって聴いていられないものだが、うまいトリオでは逆に「間」が正しい緊張感を持ち、オーディエンスがミュージシャンの一挙手一投足に惹きつけられる。John Pål Inderberg Trio はまさに極上のシンプルさを持ったバンドだ。
ノルウェーの伝統曲の構成、メロディーや雰囲気をジャズへどのように反映させるかというのがJohn Pål の一つの個人的チャレンジだが、彼のトリオはこれを難なく達成していた。初日の東京公演で、トラッド曲を無伴奏でJohn Pålとドラムの Håkon が声を出して歌い始めたのには驚いたが、曲の進行に伴い楽器が入ってくるに従って、伝統フォーク調のメロディーがジャズ・トリオの音に昇華されていくのが気持ちよかった。サックスとダブルベースのユニゾンあり、ドラムの短めのソロを何回も入れ込んだ掛け合いの曲ありと、トラッドといえども次から次へとジャズ的アレンジが展開し息をつかせない。ホンモノの音楽の力強さに改めて感慨を深くした。
Håkon Mjåset Johansen のドラム・ソロは、彼が参加する他の多くのバンドでも有名だが、今回のトリオでもその素晴らしさは歴然としていた。英語で表現すれば crispyという言葉が似あいそうだが、ピシッとした引き締まった高いトーナリティーを特徴とする彼のドラミングは数多いドラマーの中でもピカイチと言っていい。その多彩さ、フレキシビリティー、他のメンバーのライヴ演奏を聴き逃さないで即時にインプロヴィゼーションに反応させる機敏さ、スティック/マレット/ブラッシュ/ベル/その他パーカッション類の変貌自在の使い方など、どれをとっても特筆すべきドラマーだ。
John Pålは雄弁であり、ユーモアに満ちていた。単にヴェテランの経験のなせる業として片付けられないほどのステージショーマンシップだった。これ見よがしはない。冗談を連発しながらも、その底に優れた人格者であることを垣間見せる。彼のトロンハイム音楽院の教え子の多くがJohn Pålを今でも慕い、彼らのバンドにメンバーとして誘ったり、一緒にイヴェントやプロジェクトに参加したりするのはその証拠だろう。今回の公演では、ノルウェーの「クレイジーな」詩人が1910年に作ったノルウェー古語の詩を朗読したり、その古語の発音の特異さを説明したり、サックス奏者などの管楽器奏者に必要とされる循環呼吸奏法を面白おかしくデモしたりしたが、どれも優しいユーモアがあって会場を沸かせていた。
シンプルにサックス・トリオと書いてしまうのは間違いだ。その中には豊かなプログレッシヴで創造的な音楽がしまわれている。
photo:前沢春美
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三公演はどれもレベルが高く、さすがヴェテラン・プレイヤー率いるノルウェーのトリオと思わせるものだった。ピアノ・トリオと比べてサックスが主体のトリオは更にシンプルさが増す。それだけにメンバー各自の演奏内容とバンド全体としてのバランスには細心の注意が要求される。ヘタなトリオでは音がスカスカになって聴いていられないものだが、うまいトリオでは逆に「間」が正しい緊張感を持ち、オーディエンスがミュージシャンの一挙手一投足に惹きつけられる。John Pål Inderberg Trio はまさに極上のシンプルさを持ったバンドだ。
ノルウェーの伝統曲の構成、メロディーや雰囲気をジャズへどのように反映させるかというのがJohn Pål の一つの個人的チャレンジだが、彼のトリオはこれを難なく達成していた。初日の東京公演で、トラッド曲を無伴奏でJohn Pålとドラムの Håkon が声を出して歌い始めたのには驚いたが、曲の進行に伴い楽器が入ってくるに従って、伝統フォーク調のメロディーがジャズ・トリオの音に昇華されていくのが気持ちよかった。サックスとダブルベースのユニゾンあり、ドラムの短めのソロを何回も入れ込んだ掛け合いの曲ありと、トラッドといえども次から次へとジャズ的アレンジが展開し息をつかせない。ホンモノの音楽の力強さに改めて感慨を深くした。
Håkon Mjåset Johansen のドラム・ソロは、彼が参加する他の多くのバンドでも有名だが、今回のトリオでもその素晴らしさは歴然としていた。英語で表現すれば crispyという言葉が似あいそうだが、ピシッとした引き締まった高いトーナリティーを特徴とする彼のドラミングは数多いドラマーの中でもピカイチと言っていい。その多彩さ、フレキシビリティー、他のメンバーのライヴ演奏を聴き逃さないで即時にインプロヴィゼーションに反応させる機敏さ、スティック/マレット/ブラッシュ/ベル/その他パーカッション類の変貌自在の使い方など、どれをとっても特筆すべきドラマーだ。
John Pålは雄弁であり、ユーモアに満ちていた。単にヴェテランの経験のなせる業として片付けられないほどのステージショーマンシップだった。これ見よがしはない。冗談を連発しながらも、その底に優れた人格者であることを垣間見せる。彼のトロンハイム音楽院の教え子の多くがJohn Pålを今でも慕い、彼らのバンドにメンバーとして誘ったり、一緒にイヴェントやプロジェクトに参加したりするのはその証拠だろう。今回の公演では、ノルウェーの「クレイジーな」詩人が1910年に作ったノルウェー古語の詩を朗読したり、その古語の発音の特異さを説明したり、サックス奏者などの管楽器奏者に必要とされる循環呼吸奏法を面白おかしくデモしたりしたが、どれも優しいユーモアがあって会場を沸かせていた。
シンプルにサックス・トリオと書いてしまうのは間違いだ。その中には豊かなプログレッシヴで創造的な音楽がしまわれている。

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by invs
| 2017-05-21 14:14
| John Pal Inderberg T
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