この日、会場はファンの方々で埋め尽くされた。最終公演の熱気が漲る。バンドも最後とあって、エネルギーは全開、元気余ってのミスや途中機材トラブルがあったものの、2時間以上に亘る長いセットリストとアンコールでキメた。
ステージでの挨拶やメンバー紹介をこなしたギターのGary は快活でエネルギッシュ、ステージ右端で落ち着いてキーボードを弾く Kerry はGentle Giant 楽曲の作曲者としての雰囲気と風貌を備え、ドラムのMalcolm はロックの基本エイト・ビートを正確に刻みながらも複雑怪奇な変拍子を何なくこなす。ベースのRoger、 ギターの Andy、キーボードの John (彼らはThree Friends 結成前に一夜限りのライヴを行っていた Rentle Giant から加わっていた)はヴォーカルの Mick とともに、バンド・サウンドを完全なものにしていた。
9/20 夜のファン・イヴェントでGaryが答えていたように、Three Friends/Gentle Giantは「ロック」だ。繊細さを多分に持ってはいても、しなやかさをもった太いサウンドが基本だ。不思議なことに、最近の「ロック・バンド」にはなかなか同じ音が出せない。音量が大きいとか、フレーズが激しいというのとは全く次元が違う。むしろ、Three Friendsのライヴは音量をコントロールしているし、フレーズはほとんど「作曲」されている。Garyはライヴ前のサウンド・チェックの時に、ギターアンプの向きをわざわざ変えて、ステージ前方には音が直接出ないように配慮していた(よって、客席からは彼のギター・アンプはほとんど見えなかった)。ステージ上のアンプ類の音量とPAから出る音量のバランスをとるのはミキサーとして来日した Jim の仕事だが、Three Friends メンバーそれぞれが自分の立場をわきまえて音量と音質に細心の注意を払っている。
高度に作りこまれ、練習を重ねた上でなければ達成し得ない音楽ではあるが、楽譜を読むように弾いたのでは説得力が出てこない。これもファン・イヴェントでメンバーが語っていたように、彼らはすべて「耳」で楽曲を覚えて、身体で演奏している。あの複雑な演奏パートを耳で覚えていくのは並大抵ではないが、それを乗り越えてはじめて、Three Friends/Gentle Giantのライヴが魅力あるものとなるのだ。
photos: 前沢春美