タダならぬ音楽三昧

Sonar, David Torn と Bill Bruford

ミュージシャン達はつながっている。

今月中旬に初来日スタートを切るスイスのバンド Sonar は次のアルバム・プロデュ－スをギタリストの David Torn に任せている。既にスタジオでの録音は終わり、曲のファイルは David の元に送られた。

この David が1986 年にECM レーベルからリリースしたアルバム "Cloud about Mercury"にドラマーとして Bill Bruford が入っている。ちょうどその頃、アメリカのテレビ番組 New Visions で、Bill が司会役で David を紹介している映像がある。David のスタジオ・ソロ・ライヴも入っている貴重な映像だ。

映像

Bill Bruford の紹介部分はごく短い。David に対して「自分はDavid のギターのどこが気に入っているのか」と聞くのに対してDavid が「vague sound（あいまいな音） とdirect sound（ダイレクトな音） の両方が好きだから」と答え、また、「どうやってDavid のバンドにBill が入ったのか」という質問について、David が「Bill に手紙を書き、Bill がすぐに返事を出した」と答えている。

"Cloud about Mercury "ライヴ映像 - 1987、ドイツ、フランクフルト

David Torn - guitars/effects/electric koto
Mark Isham - trumpet/keyboards
Bill Bruford - drums/ electronic percussion
Mick Karn - bass

（Real & True Live Series では一回、その前に大沢個人プロデュ－スで一回 Bill のバンド Earthworks の日本公演をやっている。引退したBill の日本での最終公演はこのEarthworks だった。）

Sonar （ソナール）次期アルバム制作

今月来日するスイスのバンド Sonar のギタリストが制作中の新譜について昨日のFacebook に投稿しているので、和訳しておく。

「今日は、Sonar の新譜 Vortex に関して（新譜のプロデュースをしている）David Torn に（音の）ファイルを大西洋越しに送る前の制作作業の最終日だ。彼はニューヨークでアルバムをミックスする。少しばかり感情的になってすまないが、（アルバム収録）曲にどのくらいスリルと興奮を覚えているか話し始めることもできないぐらいだ。ポリリズムは過去最高にクレイジーで、飢えた心を満たすのに十分なものがある。でもDavid がこの音楽に持ち込んだのっぴきならないエモーションと物理的な力は、それを聴くたびに私を吹き飛ばす。彼が小さなピンク色のギターを持ったその時からバンド、特のそのリズム隊に火をつけた巨大で電流が流れたかのようなエネルギーのシフトを感じざるを得なかった。彼のアンプから鳴り出た一つ一つの音でDavid は私たちに人間であることの喜びと痛みについて、人生の美しさと不思議さについて、そして情熱的で野性的な心を持つことの重要性について物語を語ることによってインスピレーションを与えた。音響エンジニアとして素晴らしい仕事をしてくれ、かつここに掲載した写真を含めてたくさんの写真を撮ってくれたD. James Goodwinにも感謝をしたい。」

March 31 Stephan Thelen with Christian Kuntner.

Sonar の初来日ツアーは 17日に始まる。

ツアー詳細

Sonar の調弦とリズム

来月に初来日ツアーを行うスイスのバンド Sonar （ソナール）は特殊な調弦を使って演奏する。トライトーン（三全音）といい、音楽用語で "diabolus in musica"（ラテン語で「音楽の悪魔」）とも呼ばれている。厳密な定義としては「隣り合う三つの全音からなる音楽的インターヴァル」とされる（全音とは半音二つ）。京都府総合教育センター北部研修所のサイトの説明がわかりやすい。

Sonar の調弦
二人のギタリスト　: C - F# - C - F# - C - F#
ベーシスト : C - F# - C - F#

一番下の C 音（ド）は通常の調弦の E 音より低くチューニングされる。Sonar の調弦は通常ピアノなどで使われる平均律とは異なる。詳しくはメンバーの Stephan Thelen が説明している文章をご覧いただきたい（英文）。ここにはピタゴラスを引用するバンドの哲学も書かれていて興味深い。

リズムも普通ではない。多数のリズムパターンが重なり合うポリリズムとイソリズム（辞書的には「旋律を、一定の繰り返しリズムに埋め込み、それを楽曲の基礎とする手法」）を変拍子で演奏することが多い。

実際の演奏をご覧いただきたい。

Barracuda でのライヴ

2014年 4/24、スイス、チューリッヒにあるクラブ Exil（Nik Baertsch も経営者の一人）でのライヴで収録した映像　曲は "Twofold Covering"

Sonar featuring Andi Pupato - Orbit 5.7 Andi Pupato Remix (Official Music Video) 元 Ronin メンバーのパーカッション・プレイヤー Andi Pupato が特別参加

漫然と聴いてしまうと、単純な繰り返しのように聴こえてしまう。かなり注意して耳を澄ましながら集中すると、錯綜するリズム・パターンが浮かび上がってくる。いわゆるロックやポップなどのメロディ―ラインを追いかける聴き方は通じない。このあたりはECMレーベルからアルバムをリリースしている Nik Baertsch のバンド Ronin 同様だ。

Sonar 日本ツアー詳細

Sonar の二人のギタリストは以前 King Crimson の ギタリスト Robert Fripp が主宰していた Guitar Craft のメンバーでもあった。世界各地でいろいろな形態で結成され演奏活動が行われたこのプロジェクトでは普通のギターとは違う調弦が採用された。これはRobert Fripp が開発したもので New Standard Tuning と呼ばれる。詳細は 英文 Wikipedia をご覧いただきたい。

普通、変則チューニングは「変則」の名のとおり、時折り使われるものだが、Sonar ではトライトーン・チューニングが「普通」の調弦方法となっている。

ツアー開始まであと三週間だ。音楽最前線を目撃できる。

Sonar （ソナール）の初来日ツアー・スタートまで一か月切る

スイスのポリリズム・バンド Sonar （ソナール）の初来日ツアー・スタートまであと一か月を切った。初日は京都 RAG になる。

ツアー詳細

David Torn によるプロデュース・レコーディングも成功裏に終わり、メンバーは意気軒昂だ。

スイスのスタジオでの録音風景（Anil Prasad のFacebook 投稿写真より）まだ日本ではあまり知られていないバンドだが、欧米では着実にファンが増えている。King Crimson 本を書いたイギリスのライター Sid Smith は昨年のベスト・アルバム二位にバンドの二枚目のアルバムをランクインさせているぐらいだ。

日本でSonar について書かれた文章は少ないが、Rogi073.Diary の 2014年4/2 付で「SONAR というスイスのダーク音響なバンドがかっこいい」という題で記事が書かれている。プロデューサーのDavid Torn

Sonar 次期アルバムをスタジオ録音

4 月に来日ツアーを行う Sonar（ソナール）は 2/18、次のアルバムをスイス・チューリッヒにある Powerplay スタジオで録音し終わり（ ”Vortex” セッションと名づけられた）、これからミックスダウンなどの制作作業に入る。スタジオにはプロデューサーの David Torn（ギタリスト：ECM や CMP レーベル他でアルバム・リリース。Mick Karn、David Sylvian、坂本龍一、David Bowie、Bill Bruford や Tony Levin とも活動）が参加、ギターも演奏した。録音風景 - Anil Prasad Facebook 投稿写真右端がDavid Torn　　

スタジオでの録音はそれを目撃した音楽ジャーナリストAnil Prasad（David Torn を彼が十代の頃から知っているそうだ）によって絶賛されている。その絶賛ぶりは半端ではない。ニュアンスがわかるので以下、英文だが、彼の Facebook 投稿を転載しておく。

And that's a wrap! The Sonar + David Torn 'Vortex' sessions are complete. What an amazing journey it has been to be here in Zurich for it. Terabytes of audio, video and photography have been captured in this hyper-documented event. Everyone went in with an open mind and what has resulted is phenomenal, collaborative, unexpected music which I promise will blow you away when it's out. On another note, I've known David since I was a teenager going back 29 years (!) but observing him as a producer, musician and sagacious presence in such depth has been an experience like no other. I learned a whole lot. And my friends in Sonar -- Christian Kuntner, Manuel Pasquinelli, Stephan Thelen, and Bernhard Wagner -- are surely one or the most unique bands on the planet. Every one of them delivered the goods and meshed brilliantly with Torn. D. James Goodwin, engineer extraordinaire, contributed deeply to making this thing what it is as well (the photo was taken by him -- he's a great visual artist, too). This whole thing was the sound of surprise. On day 4, the band captured a huge improv that was just awesome (a crude iPhone capture is on my page, but it doesn't come close to the experience of what was recorded). Everyone came back to the control room with several people jumping up and down in excitement. It was a serious moment. I cannot wait to hear the final result. You'll no doubt be hearing about it here as it emerges. Also, a shout out to Henry Kaiser -- it was his idea to have Torn produce. There is much, much more to come on this album in the future... watch this space...

録音四日目にもの凄いインプロヴィゼーションが録音された直後、スタジオのコントロール・ルームで何人もが飛び上がって喜んでいたそうだ。Anil Prasad が iPhoneで録画した映像が Facebook に投稿されている。

Anil Prasad はサンフランシスコでウエブ音楽マガジン "Innerviews: Music Without Borders" を90年代に創設している。現存する「最も古いウエブ音楽マガジン」だ。

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このBlog の昨年 12/18 付記事でご紹介した Sid Smith （"In The Court Of King Crimson" 著者）の「2016 ベスト・アルバム・リスト」に Sonar のアルバム "Black Light" が 2 位で掲載されている。

Sonar 初来日ツアー

スイスのバンド Sonar の初来日ツアーが決まった。

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Sonar　　ソナール

スイスよりポリリズムの雄
超ディープ・ミニマリスト・グルーヴ

David Torn プロデュ‐ス次期アルバム制作開始記念「はっきりしたヴィジョン、ユニークな音、特徴あるギター調弦システムで活動しているSonar は、妥協することなく、しかし楽しみながらロックとミニマル・グルーヴを融合している。」Nik Baertsch（バンドRoninリーダー、ピアニスト・作曲家）

メンバー
Stephan Thelen　（ステファン・テーレン）　- Guitar
Bernhard Wagner （ベルンハルト・ヴァグナー）- Guitar
Christian Kuntner （クリスチャン・クントナー）- Bass
Manuel Pasquinelli （マヌエル・パスキネリ）– Drums


試聴　
曲 "Static Motion"
曲 "Tromsø"

4/17（月）18:30 開場 19:30 開演 京都 RAG
前売 3,000 円　　当日 3,500 円　　drink別
　　　　
4/18（火）19:00 開場 19:30 開演 金沢　 もっきりや　　
前売 3,000 円　　当日 3,500 円　　drink別

4/19（水）19:00 開場 19:30 開演　新潟　 Jazz Flash 　
前売 3,000 円　　当日 3,500 円　　drink別

4/20（木）19:00 開場 19:30 開演　中目黒 　楽屋
前売 3,000 円　　当日 3,500 円　　drink別

4/21（金）19:00 開場 19:30 開演　　柏　　 Nardis
前売 3,000 円　　当日 3,500 円　　drink別

4/22（土）19:00 開場 19:30 開演 千葉稲毛　Candy
前売 3,000 円　　当日 3,500 円　　drink別

4/23（日）18:30 開場 19:00 開演　横浜　Airegin
前売 3,000 円　　当日 3,500 円　　drink別

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Sonar　バンド結成経緯とアルバム・リリース

2010年、スイス、チューリッヒを拠点に活動する二人のギタリストStephanとBernhard が出会ってバンドが始まった。バンドの基本コンセプトはStephan がギターを三全音で調律したことがあったことを思い出したのがキーになった。二人はこの調律による自然なハーモニーがユニークで神秘的な音の性質を持っていることに気が付いた。

次にとったステップは、それまでエレクロ二クスや各種エフェクト類をずっと扱っていた二人にとってはかなり大胆なものだった。それらのものを全部取り去り、純粋にエレクトリック・ギターの音だけを出すようにしたのだ。その次に、ポリリズム（楽曲中、または演奏中に、複数の異なる拍子が同時に用いられている状態）とイソリズム（旋律を反復する一定の繰り返しリズムに埋め込んで、それを楽曲の基礎とする手法）のインタープレイを優先することだった。

ハイピッチのギター・ハーモニックスとうまくバランスを取るため、とても深いベース音が必要だということがわかっていたので、Stephan は友人のChristian Kuntner を二人がメンバーだった Radio Osaka というバンドから呼び寄せた。一方、Bernhard はNik Baertsch のワークショップで若いドラマー Manuel Pasquinelli に会っていたが、彼がポリリズムのビートにぴったり合っていると思っていた。一番最初のリハーサルを終わるとすぐに、このプロジェクトに必要なメンバーが集まったことを悟った。

その後、半年ほどのリハーサルを経て、Sonar はスイスで数回のコンサートを開き、すぐにアルバム ”A Flaw of Nature” を録音するためにスタジオ入りした。このアルバムは2012 年にNik Baertsch が主宰する Ronin Rhythm Records レーベルよりリリースされた。これが Cuneiform Records (USA)を率いるSteve Feigenbaum の目にとまり、ここと契約することになった。Cuneiform によって広く流通した2014 年リリースのアルバム ”Static Motion” と2015 年のアルバム ”Black Light” （David Bottrill プロデュース）は国際的評価を得、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストリア、ルーマニアでライヴが行われた。次のアルバムはDavid Torn がプロデュースをすることに決まっている。2017 年 2 月にスイスの Powerplay Studio において録音が開始され、9 月に Cuneiform Records (USA) よりリリースされる予定だ。その後にアメリカ・ツアーが控えている。

初来日ツアーは、次期アルバム制作スタート直前に行われる、これまでの集大成ライヴとなる。

企画制作 Office Ohsawa
後援　スイス大使館